このコーナーでは、企業でWebサイトの運営に携わっている方、マーケティング部門等でWebの活用法について考えておられる方向けに、Webマーケティングの実践のための手法やノウハウ、事例をご紹介していきます。市場に出回る書籍や雑誌では論じられることない、Webマーケティングの最前線に触れていただければと思います。
2006年02月28日
3Sマッチング型Webの作り方 2.構造
マーケティングユニット 棚橋
前回は「3Sマッチング型Webの作り方」の"戦略Plane"と"要求Plane"について考えました。今回は1つ上の階層である"構造Plane"について考えてみたいと思います。
※「3Sマッチング型Web構築サービス」についての情報はこちら
"構造Plane"を考える際のポイントについて紹介する前に、まず、Web2.0的環境におけるWeb全体の情報構造がどのようになっているか、現状把握を行ってみましょう。
3Sマッチング型Webが目指すのは、ユーザーエクスペリエンスの最適化(UEO=User Experience Optimazation)です。あるべき姿と現状のギャップを明らかにすることで、"構造Plane"における戦略が見えてくるはずです。
サイトの内と外で異なる"集合"
- サイト内部の"集合"
- これまでWebサイトを構築する際のお馴染みの方法として、"要求Plane"で抽出された必要なコンテンツのリストを、階層構造化されたサイトマップにするという作業があったと思います。これは一種の集合論的な手法であり、下図のように、まず「企業」という集合全体の中で、掲載する情報すべてを「商品情報」「会社情報」「IR情報」「採用情報」といった部分集合に振り分けることからはじまります。部分集合に振り分けられた情報はさらに孫部分集合とでもいうべき細かいカテゴリーに振り分けられ、適切な状態にまで分類しきれたところで、この作業は完了します。
- このサイトマップ化はディレクトリ設計や"骨格Plane"でのナビゲーション設計を行う上で重要な作業であり、さらに企業としての文脈を個々の情報に対して与えるという点でユーザーの理解度を高めることにもつながります。下の図では、ユーザーからのお問合せ対応を2つの異なる体制で行っている企業を例示しています。このようにコンテンツをどうカテゴライズし、どのような階層構造化を行うかは、企業の個性を示す文脈として機能します。
しかし、こうした構造や文脈が、Web2.0的なユーザーのブラウジング・スタイルにかかると無効化される可能性があります。
- サイトの外の"集合"
- フォークソノミー=ソーシャル・タギング
- サイトの構造が無効化される要因の1つ目は、フォークソノミー=ソーシャル・タギングです。folk(民衆)とtaxonomy(分類法)を組み合わせた造語であるフォークソノミーは、文字通り、ユーザーによる"分類"を示します。具体的には、ソーシャルブックマーク(以下、SBM)のはてなブックマークやオンライン型RSSリーダーのfeedpathでの記事単位のタグ付けなどでフォークソノミーが使われています。
- ユーザーが自身のRSSリーダーへの登録やSBMへのブックマークを行う際のタグ付けに、必ずしも企業が想定している分類を使ってくれるとは限りません。むしろ、各ユーザーは自分自身の利便性を考えた分類を行うので、その分類はユーザー自身がこれまで使っていた分類法に大きく左右されることになるでしょう(下図参照)。
- このように振り分けられた情報はその集合の名称や同じ集合内の他の情報との競合関係/協力関係により、サイト内に置かれた場合とは別の文脈に置かれることになります。
- 記事単位での閲覧
- もう1つの要因は記事単位での閲覧です。Web2.0を代表するツールであるRSS/Atom Feedはユーザーに記事単位の閲覧を促します。そもそもRSS/Atom Feedは構造的にchannel要素-item要素(Atomの場合はfeed要素-entry要素)の2つの階層構造しかもちません。最小単位である記事を含む集合として、そのFeedがどこのサイトのものかを示す情報のみが与えられています。つまり、Feed内の記事相互はそれが同一のサイトのものであるという以外に関係性を示す情報は与えられず、むしろ、ユーザーがRSSリーダー内で独自に作成したカテゴリーによって、文脈を決定されることになるでしょう。
Web2.0に関する議論で語られることの多い「サイト単位から記事単位へ」という言葉によって示されるのは、Web制作に関わる人がこれまで慣れ親しんできたサイトマップ=サイト固有の文脈が成り立たない世界が、大きくサイトの外側に可視化された(そう。それは不可視な形では存在しました)ということなのです。
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2006年02月24日
3Sマッチング型Webの作り方 1.戦略と要件
マーケティングユニット 棚橋
本日、弊社では、Web2.0時代のユーザーエクスペリエンス向上を目的した、次世代型Webを構築する「3Sマッチング型Web構築サービス」をリリースさせていただきました。
サービス・リリースの背景となるWeb2.0的環境に関する考察や、ユーザーのWeb2.0的環境に対する環境適応としての3Sに関しては、すでに当Blogでは紹介しているものと重複しますし、また、弊社Webサイトのコラム(Web2.0環境におけるユーザー行動の3つのS)のほうでも改めて紹介していますので、ここでは、もう少し実践レベルに踏み込んで3Sマッチング型Webの作り方について補足させていただこうと思います。
まずは「3Sマッチング型Webとは何か?」を簡単に紹介しておきましょう。
- Web2.0時代のユーザー行動の3Sとは?
- 3Sマッチング型Webが前提としているのは、Web2.0時代を向かえ、より知のネットワークとしての構造化の精度が増し、接続された情報も劇的に増えたインターネット環境における、オンライン上でのユーザー行動の多様化です。
- ユーザーは、ポータルサイトや検索エンジンといった限られた場所から情報を入手するスタイルから、RSSリーダーやBlogのネットワーク、SNS(ソーシャルネットワークサービス)、ソーシャルブックマークなど、より多様なWebサービスを自身のスタイルや時と場合に応じて利用することで、これまで以上に適切な形で自分が求める情報を入手するように変化しています。この変化したユーザーのスタイルを表しているのが、Search(検索)、Subscribe(購読予約)、Share(情報共有)からなるユーザー行動の3Sです。
- Web2.0時代に、何故、企業にとって3Sマッチング型Webが必要となるのか?
- 目的達成のためには明確な戦略が必要です。戦略とはすなわち環境適応を指します。上記のユーザーのスタイルの変化に応じて企業側でも検索エンジンのみに最適化を行ったWebサイトからの脱却を図ることが必要となります。企業は3Sを考慮にいれてユーザーエクスペリエンスの全体最適化を行うWebサイト=3Sマッチング型Webに移行することで、ユーザーとのより緊密な関係性を目指すことが可能になります。
- 3Sマッチング型Webの特長的な機能
- 具体的には、Blog機能、RSS/Atom Feed配信機能、トラックバック機能、Web標準準拠によるWebブラウザ以外のデバイスにもアクセシブルな環境の提供などにより、多様化したユーザーの情報閲覧スタイルへのインターフェイスを実現します。
- もちろん、Web2.0時代のWebコミュニケーションに何より求められる、ユーザーにとって有益な情報をいかに多く、また、スピーディーに発信できるかという企業の競争優位性を現実のものとするため、企業側のWeb運用をサポートするための機能もご用意しています。
- Blog感覚で更新でき、かつ大手の顧客企業様にも安心してお使いいただけるアクセスコントロールやワークフロー管理を実現するCMS機能、より多様な企業ニーズにフレキシブルに対応するため、通常のBlogツールよりも拡張性の高いセマンティックな情報入力項目の設定など、大手の企業様の利用にも十分耐えうるWebパブリッシング・システムを実現できるのが、「3Sマッチング型Web構築サービス」の特長です。
では、こうした次世代型の3Sマッチング型Webを構築するには、何を考慮に入れ、どんな手順で、設計~制作を行えばよいのでしょうか。
まず、全体感をご理解いただくために、Jesse James Garrettの"5 Planes Model"をベースに、サイトの内/外を視野に入れたユーザエクスペリエンスの最適化のために変更を加えた、"ツインタワー型5 Planes Model"で、3Sマッチング型Web構築の進め方を図式化してみましょう。
実際の作業工程は下から上に進んでいきます。
しかし、各工程間は完全に切り離された形ではなく、後工程から1つ前の工程にフィードバックを戻す形で重なり合います。
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2006年02月21日
SEOからユーザーエクスペリエンスの最適化へ
マーケティングユニット 棚橋
見込み客の獲得あるいは自社商品、サービスの市場浸透という目的でみた場合、Webサイトのアクセス数は最終的な成果指標につながる1つのパフォーマンスドライバーと見ることが可能です。そのため、ユーザーのサイトへの集客はこれまでもWebマーケティングの目的の一部をなし、それを実現するさまざまな手法が実行されてきました。
■Webマーケティング手法の変遷
ユーザー集客の手法の変遷としては、初期のバナー広告やメール広告を中心とした時代から、SEOやリスティング広告(アドワーズ、オーバチュア etc.)に重心を移した最近の手法へという流れをみることができます。
この流れは、ユーザーのインターネット利用がYahoo!に代表されるポータルサイトやメールマガジンに集中していた時代から、Googleをはじめとする精度の高い検索エンジンによって、より多くのWebサイトが参照されるようになった時代の変化とぴったり重なるものでしょう。また、その背景には、インターネット上に存在するサイト数が年々増えたことや、メールに関してもスパムメールやメールマガジンなども含めて一人ひとりが受け取る件数が以前に比べて増えたことの影響をみることが可能なはずです。
こうした流れの延長にあるのが、前回のエントリー「Blog、RSSの普及でWebサイトのアクセス数はどう変わる?」でもみたような、BlogやRSS/Atom Feed、ソーシャルブックマークやSNS(ソーシャルネットワークサービス)などのWeb2.0的サービスの台頭によるユーザーのインターネット利用の変化です。
この変化はユーザーごと、対象となる企業サイトごとに時間的に段階を踏むため、前回、グラフとして示したような変化を実際の計測により事前に可視化することはできないでしょう。また、何より実際の数値は単に受動的に決まるのではなく、サイトオーナー側の努力次第で能動的に変化させることが可能なものです。
とはいえ、多くの変化がそうであるようにそれが起こったあとでなら計測は可能になり、変化を数値によって可視化することも可能になります。ただ、問題はそれを待つだけではあまりにリスクが高すぎるということです。事実をとらえることは重要ですが、ビジネスにおいてはすべてが計測可能な事実であるとは限りません。私たちは限られた事実から思考実験により仮説を立て、何のために何を行うのかを定義した上で実行による仮説検証を行うことで変化を身をもって経験することが重要なのでしょう。
さて、話を戻しましょう。
Web2.0という時代を迎えて、ユーザーが情報の一方的な受け手から情報の発信者にもなりはじめている点はすでに当Blogで何度か指摘してきました。ユーザーはもはや検索エンジン経由で情報を受け取るだけでなく、自ら積極的に情報を発信するようになります。
そこで新たに利用されるようになったインターネットサービスがBlogやSNSであり、この2つに関しては皆様ご承知のとおり、すでに市民権を得ています。また、RSS/Atom FeedもBlog利用者が増えるのにあわせて一般にも普及してきています。さすがにソーシャルブックマークやBlog検索などのWeb2.0的サービスはまだ一般に普及したといえるまでの段階には至ってはいないものの、増え続けるコンテンツ量に対応するためには、GoogleやYahoo!とは異なる形でユーザーの利用コンテクストと情報のコンテクストをマッチングさせるため、こうしたサービスはより必要とされてくるでしょう。
これまでのWebマーケティング手法の変遷をみれば、主要な集客手段がユーザーが好んで利用するインターネットサービスにあわせたものに移り変わっていくだろうことは容易に想像できます。また、積極的にそうしたものを視野に入れながら、Webマーケティングを展開していく企業がより多くのユーザーとの関係性を構築することが可能なのでしょう。
それでは、こうした視点に立ち、現在の主流となっているSEO/SEMを見直し、さらにWeb2.0時代の3S - Search(検索)、Subscribe(継続購読、予約購読)、Share(共有) - をユーザーエクスペリエンスの視点で最適化するには、何が必要になるかを考えてみることにしましょう。
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2006年02月20日
Blog、RSSの普及でWebサイトのアクセス数はどう変わる?
マーケティングユニット 棚橋
今回は予定を変更して、情報の共有側が優位なWeb1.0の時代から、情報の需要側が有利になるWeb2.0時代の企業Webサイトのアクセス数にどんな変化が見られると予測されるか、考えてみたいと思います。
Web2.0時代のユーザーの情報閲覧行動はこれまで以上に多様化し、「Web2.0の議論で欠けているもの(中編)」でご紹介したような3S(Search、Subscribe、Share)に大別される情報検索、閲覧行動が主流となるような方向に変化してきています。
その際、誤解してはいけないのは、ユーザーの閲覧行動のスタイルが変化しても、インターネット利用時間の総計はそう大きくは変わらないということです。
総計が変わらず、足し算する要素が増えれば、当然、各要素に配分される割り当て量は減ることになります。要素間の競争は激化し、これもまた当たり前のようにユーザーにとって便利な要素が他より多く時間を割り当ててもらえることになります。各要素間に利便性を軸とした自然淘汰が起こるわけです。
ここで要素といっているのは、例えば、情報検索を含むWebサイトの閲覧であり、メールのチェック/返信であり、RSSリーダーでのRSS/Atom Feedのチェックであり、Blogの閲覧や記事の更新などです。このうち、後の2つの要素はかつては存在しなかった要素です。ユーザーの利用時間の総計にはある程度の上限があるはずで、要素が増えた分だけ、前からあった要素(メール、Web)に費やしていた時間を新たに加わった要素(Feed、Blog)に割り当てることになるでしょう。
一方でサイト側のアクセス数もそれに応じて変化します。
アクセス手段の要素は増えますが、こちらはユーザーの利用時間と異なり、上限はありません。各要素の総計がサイト全体のアクセス数となるわけです。
しかし、ここには落とし穴があります。
各要素はあくまでユーザーの利用時間に縛られているからです。
さて、ここからは架空の企業サイトを例とした算数の問題です。
例えば、ある企業は、Webサイト全体のアクセスの8割をSEOもしくはリスティング広告からの訪問で稼いでいたとします。計算を簡単にするために月間80,000ユーザーを獲得できていたとしましょう。つまり、サイト全体では月間100,000ユーザー獲得できていることになります。
さて、ここでユーザーのインターネット利用時間に変化が起き、これまで検索~サイト閲覧に割り当てられていた時間が、Blogを書いたり、RSSリーダーをチェックしたりする時間に割かれることになったと過程しましょう。そのことでWebの閲覧に割り当てられる時間がはそれまでに比べ4分の1減少してしまったとしましょう。
そうなると他の条件が変わらないという条件下では、先に設定したWebサイトのアクセス数(月間80,000ユーザー獲得)のうち、検索エンジン経由のアクセス数は同じように4分の1(月間20,000ユーザー)減る可能性があります。その分、RSSリーダー経由のユーザーなどが増やせれば、いいのですが、そうでなければアクセス数は全体でも減少するでしょう。
これを図にすると、こうなります。
前回まで紹介してきたようなインターネット環境のWeb2.0化は、このような数字の影響を企業サイトに与える可能性があるのです。上記の例では、変化の影響が良いほうに働いた場合とそうでない場合で月間40,000ユーザーの差が生じることになります。
もし、この架空のWebサイトが企業のマーケティングで大きな役割を果たしており、Web経由の問い合わせや販売が会社の売上に大きな影響力を持っていたら大変なことになっていたはずです。
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2006年02月14日
Web2.0的なものへの代替手段
マーケティングユニット 棚橋
「Web2.0の議論で欠けているもの(前編)」で、Web2.0というものをビジネスの側面から考える上で、
- 一般企業にとってのWeb2.0の影響またはメリット
- Web2.0的なものへの代替手段
- Web2.0時代の法令、規制
が議論として欠けているのではないかということを指摘し、こんな図を描いてみました。
すでに、「一般企業にとってのWeb2.0の影響またはメリット」に関しては、「Web2.0の議論で欠けているもの」のエントリーの中編、後編で論じてきましたので、今回は「Web2.0的なものへの代替手段」について考えてみたいと思います。
まず、企業のWebサイトを管理したり、Webマーケティングを担当されたりしている方から見た際、Web2.0的なものへの代替手段として考えられるのは、以下のものになるのではないかと思います。
- 企業サイトのWeb構築、運用、マーケティング活用の観点から見た「Web2.0的なものへの代替手段」
-
- Web1.0的なもの(つまり、これまで通りのWeb)
- Web以外のコミュニケーションメディア(テレビ、ラジオ、新聞・雑誌 etc.)
- オンラインでの音声・映像コンテンツ(広義ではいわゆる「通信と放送の融合」的なものも含む)
「Google」に関しては、何故、それが独立しているのか、この時点では疑問をお持ちの方も多いとは思いますが、それも含めて4つのうち、私の専門からは明らかにかけ離れた「Web以外のコミュニケーションメディア」を除いた2つについて、今回は考えてみたいと思います。
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2006年02月10日
Web2.0の議論で欠けているもの(後編)
マーケティングユニット 棚橋
前回のエントリーでは、Web2.0時代に一般企業がWebマーケティングを考える上での3つの戦略的なポイントのうち、1つ目の「1.Search、Subscribe、Shareの最適化」について考察してみました。
今回は続けて、「2.社外向けWebのユーザーエクスペリエンス向上」と「3.イントラネットの改善、社外向けWebとの連携」について考えてみたいと思います。
2.社外向けWebのユーザーエクスペリエンス向上
前回、「1.Search、Subscribe、Shareの最適化」について考えた際、ポイントとして挙げさせていただいたのは、情報量が指数関数的に増えるのに対し情報の受け手側の許容量は変化しないアテンションエコノミー下の情報環境においては、情報の流通形態が供給側に選択権があるサプライベースから需要側に選択権があるデマンドベースに変化していくことを念頭においた情報発信の形を考える必要があるといったことでした。
デマンドベースの情報発信を実現するための中心的な技術はRSS/Atom FeedをはじめとするXML技術です。XML技術はこれまで各サイトごとに固有な形で閉じ込められていた情報を、サイトの垣根を越えて流通させます。具体的には、BlogのRSS/Atom FeedがRSSリーダーやBlog検索サイト、Firefoxのライブブックマークなどに複製・転写されていくことを思い浮かべていただければよいかと思います。
これまでなら、こうした複製・転写による情報流通の効率化をほとんど一手に引き受けていたのは検索エンジンでした。最初は、リンク集を発展させたYahoo!のディレクトリ検索などでしたが、後発で登場したロボット型検索のGoogleはサイト間のリンク構造(バックリンク)を詳細に分析することでユーザーが必要としている情報とのマッチングを向上させました。
現在、Googleは「80 億以上もの URL を検索できます」と言っていますが、こうしたユーザーの利用コンテクストと情報のコンテクストをマッチングさせる技術は、スパム対策の強化なども含めて、情報量が増えると比例する形で向上してきたということができます。
つまり、オンデマンドでの情報を可能にするためには、
検索が知能をそなえるためには、リクエストを理解できなければならない。「問題はなにかを見つけることではなく、なにが問題かを理解することです」とマッカーサー財団から天才賞を贈られたコンピュータ化学者のダニー・ヒルズは言う。そして人間が本当に探しているものを、検索エンジンが理解できるかどうかにかかっているとする。
ジョン・バッテル『ザ・サーチ』より
というわけです。
ユーザーがどんなニーズを持っているか理解できなければ、適切な解決策を返すのはできないということです。
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2006年02月07日
Web2.0の議論で欠けているもの(中編)
マーケティングユニット 棚橋
前回のエントリーでは、現在のWeb2.0に関する議論の中で欠けていると思われるものを提示すると同時に、その欠けているものの1つとして、Web2.0時代に一般企業がWebマーケティングを考える際にどういった視点の転換が必要になってくるかを抽出しました。
抽出した戦略的なポイントは、以下の3つです。
- Search、Subscribe、Shareの最適化
- 社外向けWebのユーザーエクスペリエンス向上
- イントラネットの改善、社外向けWebとの連携
では、今回と次回の2回にわたり、この3つのポイントをそれぞれ詳細にみていくことにしましょう。
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2006年02月03日
Web2.0の議論で欠けているもの(前編)
マーケティングユニット 棚橋
年明けからここ数回のエントリーでは、Web2.0的な話題を取り上げて考察してきました。Web業界内ではBlogなどを中心に1年前くらいから話題になっていたWeb2.0ですが、ここに来て雑誌での特集記事や書籍の出版予定などの話題も聞かれるようになってきています。
しかし、現在のWeb2.0の話題には何か欠けているものがあるように思われます。
まず、現在、多くのWeb2.0に関する話題は以下の3つに集中している傾向があります。
- Web2.0に関するConcept、Overview(Web2.0とは何か、Web1.0とWeb2.0の比較、Web2.0のミームマップ etc.)
- Web2.0関連のテクノロジーの話題(Ajax、Ruby on Rails、RSS/Atom Feed、SNS、SBM etc.)
- Web2.0企業について(Web2.0企業に必要なもの、マッシュアップとデータベースの保有、Web2.0企業のビジネスモデル etc.)
もちろん、これ以外の話題がないわけではないので「欠けている」というのは正確ではなく、「不足している」と表現したほうがいいのかもしれません。
上記の以外の話題では、
- Web2.0環境におけるユーザー動向の変化(read-write web、知識の共有、アルファブロガー etc.)
に関するものがあります。
この4.の話題は、Web2.0企業がビジネスを行う上でのターゲットとなる人たちに関するものです。3.で自分たちがどんなビジネスを行っていくのかという話をすれば、4.の話題が出てくるのは自然な流れでしょう。
こうしたWeb2.0企業(あるいはWeb関連ビジネスを提供している企業全体)のビジネスといった視点から考えてみると、欠けているのは次の3つの話題であることが想像できます。
- 一般企業にとってのWeb2.0の影響またはメリット
- Web2.0的なものへの代替手段
- Web2.0時代の法令、規制
5.に関しては、Web2.0企業にとっては4.とは別の顧客になる可能性があるものです。アメリカでGoogleが成功していることから、それをベストプラクティスとしてB2Cのビジネスばかりが脚光を浴びる傾向がありますが、広告モデルを考えれば、当然、B2Bのビジネスも視野に入ってくるでしょう。
実際、5.に関する話題もRSS広告、RSSマーケティングという切り口では語られていますし、昨年、インターネット広告の売上がラジオのそれを抜いたことで、一層、着目されている分野でもあります。
しかし、ビジネスモデルが大きく「広告モデル」「課金モデル」「受託モデル」の3つに分類されることを考えれば、広告モデルのみが注目されているという意味で5.に関する話題はまだまだ欠如している部分が大きいように思います。
6.と7.に関しては、2.のテクノロジーに関する話題と同様に、Web2.0市場を規定する要因となりうるものですが、この2つに関してはすくなくともWeb2.0との関係性ではほとんど語られていないといってよいでしょう。これに関しては、また次回取り上げてみたいと思います。
さて、以上の1.~7.を図としてまとめてみると、下のようになると思います。
マーケティング的に考えると1.~7.の話題を検討するのは必然です。
提供するサービスのターゲット、サービス内容、サービスを可能にするテクノロジー、サービスに対する代替品、サービス提供に関連する法令や規制など、こうした市場環境をSWOT分析的な視点で検討するのは、新しいビジネスを検討する際には必須だと言えるでしょう。
しかし、実際には5.~7.に関しては欠如、不足が見られます。
これは、つまり、上の図の右半分と市場を左右する3つの要因のうち2つがほとんど無視されているということです。
このことはWeb2.0的な市場がまだ十分に成熟していない証拠だと考えても良いでしょう。