このコーナーでは、企業でWebサイトの運営に携わっている方、マーケティング部門等でWebの活用法について考えておられる方向けに、Webマーケティングの実践のための手法やノウハウ、事例をご紹介していきます。市場に出回る書籍や雑誌では論じられることない、Webマーケティングの最前線に触れていただければと思います。
2005年11月25日
経験価値の演出
マーケティングユニット 棚橋
コモディティ、製品、サービスに続く第4の経済価値としての経験価値。
前回「経験価値の4E領域」と題した記事では、「Entertainment(娯楽)」「Educational(教育)」「Escapist(脱日常)」「Esthetic(美的)」からなる経験価値の4E領域を紹介し、あらゆる企業が自社の製品、サービスをツールにすることで、顧客の価値ある経験を演出できる可能性があることについて触れました。
その際、企業にとって1つの重要な顧客接点であるWebサイトを、顧客に価値ある経験を提供する場としてどう演出するかが今回のテーマです。
結論から言えば、いかにして顧客が自社の製品、サービスに触れることで得られる経験を、上質なストーリーや夢を引き出すエピソード、インスピレーションを駆り立てるデザインや音楽によって演出できるのかがポイントなのではないかと思います。
『永遠に愛されるブランド ラブマークの誕生』(ランダムハウス講談社刊)で、著者であり、アイデア・カンパニー、サーチ&サーチ社のワールドワイドCEOであるケビン・ロバーツ氏は、プロダクツ→トレードマーク→ブランドという進化の先にあるステージとして、顧客とのあいだに"理屈を超えたロイヤルティ"を生み出すものをラブマークと名づけています。
著者は、ブランドが"理屈を超えたロイヤルティ"を創出し、顧客一人ひとりのラブマークとなるためのキーワードとして、
の3つを挙げています。
Webサイトで自社の製品、サービスによって演出する経験について、顧客の夢や希望を膨らませ、共感やコミットメントを得るためには、この3つのキーワードについて考えてみるとよいかもしれません。
神秘性、官能性、親密さという3つのキーワードは、Web2.0というトピックスに代表されるような現在、主流になりつつあるWebの流れに向いているのではないかと感じます。
ブランドの上質なストーリーを語ること、五感に訴えるブランドの世界の表現、夢を引き出す数々のエピソード、共感者としてのユーザーを巻き込んだコミュニケーション・プラットフォームとしての場。こうした要素は現在の、そして、これからのWebサイトに求められる要件ではないかと思います。
そして、こうした要件を満たしたWebサイトは、経験経済下におけるラブマークとしてのブランドにとって、非常に重要な顧客接点となり、顧客に価値ある経験をもたらす場となるのではないかと思います。
これまで数回にわたり「経験」というキーワードを中心に、何がこれからのWebサイト、企業のマーケティングにおいて大切なのかを考えてみました。
まだまだ、「経験」について考えること、そして何より実現していくことは、たくさんあると思います。
ただ、こうした課題が未来へと広がっている経験経済というステージは、とてもワクワクするものです。
いまや顧客は製品の満足(Satisfaction)だけでなく、経験を通じて得られる情熱(Passion)や夢(Dream)を求めています。
そうした顧客がワクワクするような経験を演出する側は、それ以上にワクワクを求める情熱を持っている必要があるのではないでしょうか。
さあ、デスクの前にじっとしてばかりいないで、ワクワクするものを探しにいきましょう。
さて、次回は「CS/CE分析(バリュー分析)」と題してお送りします。