このコーナーでは、企業でWebサイトの運営に携わっている方、マーケティング部門等でWebの活用法について考えておられる方向けに、Webマーケティングの実践のための手法やノウハウ、事例をご紹介していきます。市場に出回る書籍や雑誌では論じられることない、Webマーケティングの最前線に触れていただければと思います。
2005年11月29日
CS/CE分析(バリュー分析)
マーケティングユニット 棚橋
CS/CE分析とは、別名バリュー分析とも呼ばれるとおり、顧客の期待値(Customer Expectation)と顧客の満足度(Customer Satisfaction)のそれぞれを、顧客の支払うコスト=商品・サービスの価格と比較した際のギャップを元に、顧客が感じるバリュー(価値)について分析を行う手法です。
CS/CE分析を行うことで、企業は現在の自社商品・サービスが顧客ニーズをどのように満たしているかを測定し、改善のポイントを明らかにすることができます。
例えば、顧客満足度の高低を縦軸に、顧客の期待値の高低を横軸にしたマトリックスを考えると、以下のようなことがわかります。
つまりは、上記のようなCS/CE分析を行うことにより、企業は、自社の商品・サービスのどこに顧客が満足していて、どこに不満を抱いているかを把握することが可能になるわけです。
顧客の期待値が高いものに関しては、高い顧客満足を目指す必要があり、反対に、顧客の期待値が低い項目に関して、いくら顧客満足度を高めても全体的な評価はそれほど上がらないということです。
一方で、顧客満足度と顧客の期待値だけを分析の対象にしてしまうことには、問題がないわけではありません。
『経験経済-脱コモディティ化のマーケティング戦略』(B・J・パインII+J・H・ギルモア著、ダイヤモンド社)で、著者らは、顧客満足に関する次のような式を提示した上で、
顧客満足 = 顧客が得られると期待しているもの - 顧客が得られたと認知しているもの
「顧客満足度の測定は、顧客が本当に欲しいものを発見するというよりは、すでに企業が行っていることに対して顧客が抱いている期待を理解し、マネジメントすることを主眼としている」と述べています。
著者らはさらに、企業は顧客が本当に欲しいと思うものを提供するために、次の式で得られる顧客我慢を理解しなくてはいけないと述べています。
顧客我慢 = 顧客が本当に求めているもの - 顧客が(心ならずも)受け入れたもの
これは、トム・ピーターズが最近の著書『トム・ピーターズのマニフェスト(1)デザイン魂。』(ランダムハウス講談社刊)で述べている、サービス経済と経験経済における測定基準の違い(前者の測定基準は「顧客の満足」であり、後者の測定基準は「顧客の成功」)とほぼ同一の観点を持ったもので、より顧客志向の考え方だと言えるのではないかと思います。
Webマーケティングにおいても、同じような視点で考えなくてはならないのではないでしょうか。
例えば、SEO対策。
必要なのは、特定のキーワードを上位表示することなのか、あるいは、ユーザーが必要としている情報を探しやすくするために自社のコンテンツを検索エンジンに対して最適化させることなのか。
あるいは、提供する情報は、単にユーザーが必要としている最低限の情報を提供できればいいのか、あるいは、ユーザーが本当に求めているソリューションまで提供してしまうことを検討すべきなのか。
また、自社の商品・サービスについて理解していただくためには、商品・サービス紹介ページだけで十分か。他のお客様が実際に利用してみた声や、お客様の疑問に答える情報は必要ないのか。
また、随時に新しいエピソードを紹介することで、お客様に自社の商品・サービスをさまざまな角度で演出してみせることができるようなBlogを使ったコミュニケーションは必要ないのか。
このように、Webマーケティングにおいても、「お客様が本当に欲しいものは何か?」を見つけようという積極的なコミュニケーションこそが、結局は、現状の商品・サービスの改善のために必要な分析も可能にするのではないでしょうか?
企業側が、積極的なコミュニケーションで情報発信を行っていくことによって、アクセスログ解析やユーザーからのインバウンドによって、お客様の潜在的なニーズがどこにあるのかも調べることができるはずです。
Webマーケティングにおいては、そうしたブランドのコンセプトに基づく日々の積極的なコミュニケーションこそが、お客様と企業のギャップを埋める手段となるはずです。
次回は「クオリア降臨」と題してお送りします。お楽しみに。