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このコーナーでは、企業でWebサイトの運営に携わっている方、マーケティング部門等でWebの活用法について考えておられる方向けに、Webマーケティングの実践のための手法やノウハウ、事例をご紹介していきます。市場に出回る書籍や雑誌では論じられることない、Webマーケティングの最前線に触れていただければと思います。

2005年06月28日

RSS活用によるコーポレート・コミュニケーションのインテグレーション

マーケティングユニット 棚橋

RSSとはRDF Site Summary、あるいはRich Site Summary、またはReally Simple Syndicationとも呼ばれる、サイトの更新情報(の要約)をXML形式で記述するフォーマットの一種です。
現在、RSSは、Blog(ブログ)コンテンツの流行を機に、情報配信の新たなスタイルとして定着しはじめています。

さて、ビジネスサイトでのRSSの活用メリットとしては、他でもよく言われるような、RSSリーダーを活用した顧客囲い込み型のマーケティング・メディアとしての利用やRSS広告など、メールに続くインターネットでのプッシュ型の情報発信メディアとしての特長を活かしたメリットが考えられています。

もちろん、そうしたメリットもRSSにはありますが、何よりRSSを特徴づけているXML形式のフォーマットである点に着目すれば、企業内のデータ統合や統合的な文書管理への活用という側面でも着目できるのではないかと思います。

現在、各企業が運営するWebサイトは決して1つとは限りません。そうした場合、問題として起こりえるのは、複数のWebサイトにまたがる情報内容の整合性と、複数サイトに情報掲載を行うための作業フローです。

Webサイト内の情報を運用していく上では、時間の経過を経ても内容の変更が必要ない情報もあれば、イベント情報やIR情報など、時間の経過によって情報内容そのものを頻繁に変更しなければならない情報が存在します。
それぞれの情報コンテンツに関するコンテンツオーナーの役割をもつ担当者自身は、その情報にいつ内容の変更が必要かは把握しており、自身の権限で変更が可能なページに関しては実質的な変更作業を行うでしょう。

しかし、イベント情報やIR情報での記述は、企業サイト全体のトップページに掲載されることもあれば、ニュース情報として扱われることもあります。
こうした情報コンテンツの変更は、先のコンテンツオーナーの権限ではなく、Webサイト全体の管理を行うWebマスター権限であったりすることから、情報内容の更新に時間的なギャップが生まれ、情報の整合性が一時的に損なわれてしまったり、最悪の場合、情報の整合性が完全に失われたままの状態になってしまうこともあるでしょう。

Webサイトにおける企業情報が、Webサイト単位、ページ単位で異なっていれば、ユーザーの信頼性を損なう可能性は大いにあります。
これは重大なコーポレート・コミュニケーションの問題であるはずです。

しかし、現在のところ、Webサイトにおけるこうした重大なコーポレート・コミュニケーションの問題に対して、きちんとした対策を行っている企業はそれほど多くはありません。

当然、これまでもそうした問題を解決するために、コンテンツマネジメントシステム(以下、CMS)を導入した一元的な管理や、データベースなどによって情報内容を一元的に管理する仕組みを独自に開発することなどによって対応している企業もあります。
しかし、こうしたCMSの導入やデータベースを中心にしたシステム開発には、導入に際して、金額的な面でも、Webサイトの情報発信・更新業務に関する社内タスクの再整理作業のリソース的な面でも、最初に大きなコストが発生してしまうため、体力的にそこまでのコストをかけられない企業にとっては負担が大きすぎてしまい、導入そのものをあきらめざるをえないものでした。
また、Webサイトとして見た目上の一貫性は保っているWebサイトでも物理的なサーバーが分かれていたりすると、システムそのものの導入がむずかしいという問題もあります。

こうした理由によって、いまでも「複数のWebサイトにまたがる情報内容の整合性」や「複数サイトに情報掲載を行うための作業フロー」の面で悩まれている企業は数多くあると思います。
しかし、先にも述べたようにこれは重大なコーポレート・コミュニケーションの問題です。「コーポレート・レピュテーション」の回でも取り上げましたが、「企業の評判」はいまや業績、ブランドイメージにも大きな影響を与える重要な問題です。
そして、レピュテーション(評判)を管理する上では、「真実性:誠実な自らの提示」「透明性:適切な情報開示」は、コーポレート・コミュニケーションにおける重要な管理項目です。

こうした問題解決に際して、RSSによる企業内情報の統合を考えてみてはいかがでしょうか?というのが今回の提案です。

最初にも述べたとおり、RSSはXMLベースのフォーマットですので、情報統合にはそもそも適しているというメリットがあります。
また、実際にRSSリーダーを介してユーザーの囲い込みにも使えるぐらいですので、物理的にサーバーやネットワークが分かれてしまっている企業内の複数のWebサイト上の情報の共有も容易に可能となります。
CMS同様に、最初にどのタイプの情報をページ間、Webサイト間で共有するかを決めておけば、各情報の更新が発生するたびに各情報コンテンツオーナーと企業Webサイト全体を管理するWebマスターが作業フローや掲載スケジュールの打合せをする手間もなくなりますし、RSSベースでの共有を可能にするのはCMSを導入することに比べれば導入コストは格段に抑えられます。
以前(「コンテンツマネジメントシステム(CMS)」)にCMSとしてのBlogの活用を取り上げましたが、Blogを活用すればRSSによる企業情報の統合はさらに容易になるはずです。

企業のマーケティングは、これまで以上に企業としての一貫したコーポレート・コミュニケーションの重要性が高まってきているように思います。
顧客関係性(カスタマー・リレーション)に注力したマーケティング・コミュニケーションだけでなく、従業員、投資家、採用希望者、マスコミ、パブリシティなど、あらゆるステークホルダーのことを考慮して情報発信を行うコーポレート・コミュニケーションの必要性が増してきています。

個人的な営業活動を振り返っても「売る」ことばかり考えていてもモノは売れません。
「売る」ためには「売る」こと以外にも、お客さんのことを考えたり、いっしょに働く人のやりやすさや長所・短所を考えたりしながらでなければ、期待する「売上」は達成できません。自部門の「売上」の向上を考える際でも、自部門だけでなく関連する部門のことも同時に考えたほうが、「急がば回れ」で、結局は期待する成果を上げやすかったりします。
その反対に「なかなか売れない」と嘆いている人を見るとたいてい自分の「売上」ばかりを優先していて、お客さん、同僚を含めて人の話に耳を傾けられないことが多いようです。
なぜなら「売上」とは、対お客さんという意味でも、対社内という意味でも、自分以外との外部との関係性の結果にほかならないからです。

それと同じで企業レベルのマーケティングを考える際にも「売る」ことばかりに焦点をあてたマーケティング施策だけでは効果は期待できません。
コーポレート・ブランドの構築、すべてのステークホルダーに対するCSR(=企業の社会的責任)を考慮した適切な情報発信によって、コーポレート・レピューテーションを管理していくことが、結局は自社のマーケティング効果も高めることにつながるはずです。

そのためにも、企業内Webサイトにおける情報内容の整合性を保ち、適切な情報発信を継続して行うために社内の情報発信フローを整理し設計しなおすことは、いますぐにでもとりかかるべき課題ではないでしょうか。
RSS活用によるコーポレート・コミュニケーションの統合について、詳しくお知りになりたい方は、お問い合わせページよりお問い合わせください。

さて、次回は、T字形ER手法を参考にビジネスBlogの活用を考えると題して、企業情報のうちで時系列に意味のある情報とそうでない情報について考察することで、ビジネスBlog活用のヒントをご紹介したいと思います。

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