このコーナーでは、企業でWebサイトの運営に携わっている方、マーケティング部門等でWebの活用法について考えておられる方向けに、Webマーケティングの実践のための手法やノウハウ、事例をご紹介していきます。市場に出回る書籍や雑誌では論じられることない、Webマーケティングの最前線に触れていただければと思います。
2005年04月19日
ベンチマーキングによる競合ブランドのポジショニング調査
マーケティングユニット 棚橋
前回(ポジショニング・マップ 相違点と類似点)に引き続き、マーケティングにおけるポジショニングについて考えてみたいと思います。
ポジショニングを策定する際には、現状のブランドの状況を知ることが重要なタスクとなります。現状把握の手法としては、顧客、自社、競合他社の3つの視点で分析を行なう3C分析が一般的です。
ブランディングを考える際にも、競合他社ブランドのポジショニングを知ることが、標的市場の顧客の心や事情を把握すること同様に、自社ブランドのポジショニングを考えるためには有効です。
ブランディングとは、ターゲットとする顧客との間で、いかにブランド価値を共有していくかがポイントとなる活動です。
この場合、価値は基本的には差異から生まれます。
(「すべては対立として用いられた差異にすぎず、対立が価値を生み出す」フェルディナン・ド・ソシュール、言語学者、1857~1913、スイス)
顧客にとって意味のない差異は価値とはなりませんが、顧客が競合ブランドに感じるメリットあるいはその逆の不満に対して有効な差異を示すことができれば、競争優位性を生み出すブランドポジショニングを築くことができます。
そのためにも顧客の立場で競合他社のブランド・ポジショニングを知ることは必要なことです。
顧客の頭の中のポジショニングの元となるブランド知識を顧客に共有してもらうためには、顧客のブランドに対する直接的体験と間接的体験をともに考慮する必要があることは前回も書きました。
後者の間接的体験での競合ブランドとの比較を行う上では、Webコミュニケーションにおける競合調査を定期的に実施することが有効です。先ほども述べたように価値とは差異であり、また、意味ある差異を生み出すためには競合他社との相違点と類似点を考慮することが重要です。そのためには、Webサイトで複数のブランドを比較するユーザーが、各ブランドのWebコミュニケーションに触れることで、どのような価値を見出すかという面で、競合ブランドの動向を調査していくことが必要でしょう。
例えば、化粧品メーカーであれば、機能的な面と情緒的な面との訴求のバランスにより、自社ブランドのポジショニングを機能的方向で差別化することもできますし、より情緒的な方向でポジショニングすることもできるでしょう。すでに機能的な面(例えば、加齢に対処する機能や敏感肌に対処する機能)で評価を得ているブランドであれば、類似点をもつ同じカテゴリーに属する競合ブランドに対しては、類似点における優位性を強化することも可能ですし、より情緒的な面(ファッション性、ステイタス etc.)での差別化を図ることも可能でしょう。
ブランド・ポジショニングは、ブランドが何者であり(ブランド・エッセンス)誰のためのもので(ターゲット)、どんな価値を持ち(ブランド・プロミス)、どんな人柄で顧客との関係をもつか(ブランド・パーソナリティ)を明確にすることで、競合ブランドとの差別化をはかり、顧客とブランドの関係を構築、維持するためのものです。そのためにも競合ブランドのポジショニングを調査し、自社ブランドの現状(強み、弱み、機会、脅威=SWOT分析)を把握しておくことは重要です。定期的に競合ブランドのベンチマーク調査を行ない、自社ブランドのマーケティング・プログラムが有効にはたらく環境が持続できているかを把握するのです。競合ブランドとのポジショニングの比較を行なうツールとしては、ポジショニング・マップが一般的ですが、シックスシグマなどで用いられる品質機能展開(QFD)をツールとして応用することも可能でしょう。
また、競合ブランドのポジショニング調査とともに、ブランドのもつ効果としてのアクセス状況の競合比較や自社ブランド・サイトのアクセス数の変化を定期的なログ解析で分析する効果測定と同時に行なうことで、ブランド・コミュニケーションの効果的な管理が可能になります。ブランド・マネジメントのためには、定期的にブランド・パフォーマンスの測定と分析を行なうことが重要なプロセスの1つとなります。
アクセス状況の競合比較には、Alexaや「Web視聴率調査」などが活用できますし、定期的なログ解析に関しては、弊社でスパイラル ログ解析(定点観測レポート)をご用意しています。また、Webサイトを中心にした「競合ブランド・ベンチマーク調査」もあわせてご利用いただくことも可能です。
ただ、以前に、「アクセスログ解析をいかに活用するか」という題でも書きましたが、重要なことは測定・分析を行なうことではなく、計画~実行~測定~コントロールというPDCAサイクルをブランディングの仕組みとして構築・運用していく中で、競合ベンチマーク調査やアクセスログ解析といった測定・分析を行っていくことです。実際のブランディング活動を進めていく上では、こうしたブランド・マネジメントに課題をもつお客様も多いのではないかと思います。そうした課題をもつお客様のためには、ブランド・パフォーマンスの測定・分析を含む、統合的なブランド・マネジメントのサービスとして、ブランディング・ソリューション for ブランド・マネジメントもご用意させていただいております。
サービスについて詳しくお知りになりたい方は、是非お問い合わせページよりお気軽にお問い合わせください。