このコーナーでは、企業でWebサイトの運営に携わっている方、マーケティング部門等でWebの活用法について考えておられる方向けに、Webマーケティングの実践のための手法やノウハウ、事例をご紹介していきます。市場に出回る書籍や雑誌では論じられることない、Webマーケティングの最前線に触れていただければと思います。
2005年03月15日
Webマーケティングに必要な知識
マーケティングユニット 棚橋
いま、ある有名なアーティストの方と仕事をしています。その方と話していると、こんなことを思います。
世の中には、頭のいい人/よくない人がいるんじゃなくて、頭を使い慣れている人(使うのをためらわない人)とそうじゃない人がいるんだなって。
ホントにその方の頭のキレには驚かされます。アーティストなので、知らなくて当然な
CSRマーケティングやコンタクト・ポイント戦略なんて話題でも、すごく興味をもって話を聞いてくれるし、また、それを理解して、即座に的確な反応を返してきてくれます。
新しいものに物怖じをせず、むしろ、積極的に取り入れようとする姿勢。
そういう姿勢で普段から周囲のものに接していれば、自然と頭をどう使えばいいかなんてわかってくるのだろうと思います。
こうした新しいものに対する貪欲な知識欲は、Webマーケティングに関わる上でも常々、必要だと感じています。
- Webに関する技術、ツールのトピックス(SEO、Blog、RSS、Web標準、ユーザビリティ、アクセシビリティ、etc.)
- Webやその他のクリエイティブに関する知識(デザイン、ライティング、etc.)
- 情報システム(IT)に関する基本的な知識(インフラ、ハード、アプリケーション、DB、etc.)
- プロジェクトマネジメントに関する基本的な知識(PMBOK、バランススコアカード、シックスシグマ、etc.)
- ビジネスに関する基礎的な知識(経営、会計、生産、物流、etc.)
- マーケティングの基礎知識(セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニング、SWOT分析、AIDMAの法則、パレートの法則、etc.)
- クライアント企業に関する知識(事業理解、商品知識、企業文化、etc.)
- 最近の流行、話題に関する知識(ビジネス、文化、Web関連、etc.)
- 人の意識、行動に関する先端知識(脳神経科学、認知心理学、言語学、人類学、etc.)
- 統計、調査に関する基本的な知識(アクセスログ解析、顧客満足度調査、etc.)
こう書き連ねると、非常に大変なことのような気がします。実際、これだけの知識を得ようとすれば、大変ではないとはいえません。しかし、逆にこれらのことを知っていることにより、自身の業務が楽になり、クライアントの満足を得やすくなることも間違いありません。
また、さまざまな知識を取り組む意識を常にもつことは、周囲とのコミュニケーションを円滑にする助けにもなるでしょう。Webマーケティングに限らず、後工程のことを考えながら、自分の業務を進めることは非常に重要です。後工程のことを理解しようとすれば、自分の業務の専門領域だけをわかっているだけでは不十分です。「アクセスログ解析をいかに活用するか」でも書きましたが、マーケティング・プロジェクトは、現状把握~課題の抽出~ターゲティング、ポジショニング~プラン作成~実行という全体の流れの中で、さまざまな人々が関わり、最終的な成果をあげていくものです。現状把握のための調査、分析を行なう人は、次のターゲティングやポジショニング、マーケティングプランの作成を行なう人が必要とする情報を抽出しなくてはいけないし、当然、何が必要かを理解するための最低限の知識が必要でしょう。プランを作成する人も、Webにおいて実行可能なプランを作成するため、HTMLやデザイン、SEO、システムなどに関する基本的な知識がなければ、実行を支えてくれる人たちと話もできないでしょう。
また、後工程を広い意味で捉えれば、最終的にはクライアント、その先のエンドユーザーがいます。ようは、知識をもつことが重要なのではなくて、知識を自在に取り込める、頭の使い方を訓練によって習得し、そのことで自分の直感や推察力を有効に機能するようにすることだと思います。そして、それは何よりも周囲との関係をより深いものにし、Webマーケティングを成功に導くためのものです。
自分の殻をつくって、専門的な領域に閉じこもろうとすることが一番悪いことです。プロという言葉を間違って捉えてはいけないと思います。プロのノウハウとか、経験は、ほとんどの場合が邪魔なものです。何かしらのガイドラインに従っていればOKなんてことは、ビジネスを行なう上ではほとんど存在しません。ビジネスを成功に導くために、最も重要なファクターである顧客の心も、顧客の置かれた状況も常に一定などということはありません。それを自称プロ(=専門家)が使い古された自身のガイドラインに無理やり当てはめて何でも答えを出そうとするのは、自ら成功の可能性を狭めているようなものです。
成功をするためには、顧客の立場にたって考えられるようにしなくてはなりません。実際は顧客ではない専門家が、顧客の立場にたつために、必要なのが上記のような知識であり、それができるのがプロだと思います。貪欲に他のカテゴリーの新しい知識を吸収して、そこから自分なりに新たなものを生み出すクリエイティブな思考が、Webマーケティングに携わる人には求められている気がします。
そこでは、忙しいなんて言い訳は通用しないのは言うまでもないでしょう。