このコーナーでは、企業でWebサイトの運営に携わっている方、マーケティング部門等でWebの活用法について考えておられる方向けに、Webマーケティングの実践のための手法やノウハウ、事例をご紹介していきます。市場に出回る書籍や雑誌では論じられることない、Webマーケティングの最前線に触れていただければと思います。
2005年03月08日
コンタクト・ポイント戦略とCSRマーケティング
マーケティングユニット 棚橋
以前、弊社サイトのコラムで、コンタクト・ポイント戦略を取り上げました。ブランディングを行なう上で、企業は、ブランドと顧客の接点となるすべてのコンタクト・ポイントを管理し、統括的に「顧客の頭の中に価値あるブランド知識を蓄積する活動」としてのブランディングを行っていく必要があるというのが、コンタクト・ポイント戦略の要点です。コラムでは、1つの重要なコンタクト・ポイントとしてWebサイトも「顧客接点」というキーワードで構築、運用していく必要があるという主旨で書きましたが、ここでさらにWebマーケティング、Webブランディングを考える上での重要な事柄として、このコンタクト・ポイント戦略とCSRマーケティングの関係性についても触れておきたいと思います。
コンタクト・ポイント戦略では、顧客接点となるコンタクト・ポイントを4つにカテゴライズしており、そのうち、3つは購買前、購買時、購買後といった形でそれぞれ「顧客」という視点で顧客接点を特定、分類しています。ただ、残りのひとつの「影響コンタクト・ポイント」は、顧客あるいは見込み客を、直接的にはまだ購入意思もニーズももっていないひとりの生活者として捉えた上で、企業が行なうマーケティング以外の活動としてのIR活動、採用活動、資材調達活動や、従業員との関係性や社会に対する関係性といったものを、ブランディングにおいてブランドイメージを左右する重要なファクターのひとつとして位置づけています。
これはまさにCSRマーケティングのコンセプトに通じるものがあります。通常、「CSR(Corporate Social Responsibility)=企業の社会的責任」という言葉は、企業が自社の顧客に対し責任を負うだけでなく、より広い意味でのステークホルダー(顧客、株主、従業員、取引先、地域住民、求職者、投資家、金融機関、政府・・・等)に対し、実効性のある配慮行動をとることという、どちらかといえば、マイナス要因の削減という意味合いで捉えられることが多い言葉です。しかし、CSRマーケティングは、企業が社会に対して、どのような価値をもたらす責任をもっているかをコミュニケーションし、実行するという意味で、プラス要因を増大させる意味で積極的に捉えなおしたものであり、コンタクト・ポイント戦略が「影響コンタクト・ポイント」を重視するのと同様な価値観で、社会における企業の価値を捉えなおしたものと言えます。
Webというメディアは、既存のメディアと比較して、より多くのより深い情報をユーザーに対して発信できるメディアであり、さらに情報発信のスピード、効率性とその効果測定の容易さに優位性のあるメディアです。こうしたメリットがあるがゆえに、CSRマーケティングのコンセプトをブランディングにおける「影響コンタクト・ポイント」に融合させて、実際の情報発信によるコミュニケーションとそれに対する社会のリアクションを測ることも容易に可能となります。
また、情報発信、コミュニケーションという意味では、CSRマーケティングの考えを具体的に情報コンテンツに落とし込む方法としては、バランススコアカードと連動した「知的資本」という考え方が参考になります。商品・サービスという実際に顧客の購買対象となるモノだけを訴求するのではなく、ブランド価値を支える、従業員のナレッジや企業の保有する技術やスキル、企業文化を伝えるコミュニケーションが、実際の商品・サービスの価値を顧客と共有、共創していく上での重要なファクターとなります。社会における企業の責任が問われるというのは、一方で、社会における自社の価値をしっかり考え、それを積極的に社会に対してコミュニケーションしている企業ほど、コーポレート・ブランドの価値を高めることが可能だといえます。
こうした視点で実際にコーポレート・ブランドの価値を高めるWebコミュニケーションをどう計画し、実行していくかについては、4月22日(金)に開催するマトリックスWeb構築セミナー(運用編)でもより詳しくご紹介いたします。ご興味のある方は、ぜひご参加いただければと思います。また、ご相談のある方は、お問い合わせページよりお気軽にお問い合わせください。