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実践!Webマーケティング:Blog

このコーナーでは、企業でWebサイトの運営に携わっている方、マーケティング部門等でWebの活用法について考えておられる方向けに、Webマーケティングの実践のための手法やノウハウ、事例をご紹介していきます。市場に出回る書籍や雑誌では論じられることない、Webマーケティングの最前線に触れていただければと思います。

2006年08月25日

ロングテールをWebサイトのアクセスログから検証する

マーケティングユニット 棚橋

先日、弊社のWebサイトのアクセスログを調べていたら、検索エンジン経由の流入キーワード数の上位20%が全体の約80%を占めているとわかりました。いわゆる80:20の法則が見られたわけです。さらに今度は上位20%だけを対象にして、そのうちの上位20%(全体の4%)が全体の20%の何%を占めているかを調べてみると、ここでも同じように上位20%(全体の4%)が全体の20%のうちの80%を占めるという入れ子状の傾向も見られました。
グラフにするとこうなります。

どちらも注目を集めるロングテールのグラフのように見えます。しかし、ロングテールという言葉は若干、誤解されているところがあって、実はインターネットを使えば必ずロングテールになるというわけではありません。上の例のように80:20の分布が見られることもあります。
今回は、いまひとつ誤解されている感のあるロングテールを、パレートの法則、ベキ分布といった観点から見直してみようと思います。

■ロングテールとパレートの法則は矛盾しない

1897年に、イタリアの社会・経済学者ビルフレッド・パレートが発見したパレートの法則は、彼が1880~90年代のヨーロッパ経済を統計的に分析した上で、個人の所得金額(x)とその所得金額以上の所得を得ている人の数との間に、定数aとパラメータαに媒介される、

という関係が成立することを示したものです。
いまではパレートの法則を80:20の法則と呼んだりしますが、実はパレート自身は一度も80:20の法則という言葉を使ってはいないと言われています。実際、上記の式のパラメータαを変化させれば80:20という比率はいくらでも変わることがわかると思います。
つまり、重要なのは80:20という比率ではないということです。
パレートが示したのは、そこに大きな偏りのみられるベキ分布の傾向が存在するということでした。

では、ベキ分布とはどういうものでしょう? まずはこのグラフをご覧ください。

左側のグラフは、パレートの法則の式に類似するベキ分布を示す式を元に作成した数値をグラフ化したものです。左側ではほぼ平らだと思える形で推移した後、右側で急激に数字が伸びているのがわかると思います。
右側のグラフは同じ数値を両対数グラフ(x,y軸ともに数値を対数化したグラフ)で表現しなおしたものです。ベキ分布は両対数グラフにするとこのような直線を描くようになります。ロングテールの場合、この直線の傾きがゆるくなるわけです。

このように見ていくと、ロングテールはパレートの法則と矛盾するものではないことがわかります。むしろ、80:20の法則と間違えて比率を固定されてしまっていたパレートの法則を、再び、その核心部分にあるベキ分布に焦点を当てたものとして理解したほうがその応用範囲は広がるのではないかと思います。

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2006年08月16日

Employee Generated Media : 2.メリットとデメリット

マーケティングユニット 棚橋

前回のエントリーでは企業のWebサイトやBlogで従業員自らが積極的に企業の現場の声を伝えていく「Employee Generated Mediaとしての企業サイト」の可能性について考えました。
今回は引き続き、従業員自らが情報の生産者となり情報を発信していくことで得られるメリットとデメリットについて考察してみようと思います。

■誰もが情報を発信しかつ共有できる時代

先日、代表の高橋もがBlogにこんなことを書いていました。

ネットの時代とは、「隠せない時代だ」と思ったのは6年前ぐらいだろうか? 世の中の多くの事象は自然にできあった事実よりも、誰かの手によって作られたイメージの方が多いのかもしれない。たぶん、昔からそうだったんだろう。違いは、昔は隠せたことも、今―ネット時代はどうも隠し通すことができない時代といえるのではないだろうか? 少なくても合意形成が非常に難しい。 一言でいえば、誰もが情報を発信しかつ共有できる時代だからだ。

隠せない時代 | 経営者の独り言 | ミツエーリンクス

確かにそうした傾向はあり、匿名性や虚偽の情報の掲載も可能なインターネット環境だからこそ、利用するユーザーは不自然さにはすくなからず敏感な反応を示しますし、企業に対してもより高い透明性を求める傾向があります。透明性の低い不自然な情報に対しては嫌悪をしめす一方で、たとえ匿名であってもその情報内容から本音を感じさせるものが読み取れれば逆に好意的に感じてもらえるといったこともあります。そして、悪い情報も良い情報もユーザー間で共有されるようになっているのが現在のインターネット環境であるといえるのではないかと思います。ソーシャルブックマークサービスのはてなブックマークでは企業の不祥事を扱ったニュースなどは[これはひどい]というタグ付けがされ共有されたりします。

このようなユーザー間の情報共有を推し進めているのは、個人が自由に情報発信のできるBlogやSNS、はてなブックマークやlivedoorクリップニフティクリップなどに代表されるソーシャルブックマークサービス、newsingECナビ人気ニュースBlogMemesなどのソーシャルニュースサイトなどのWeb2.0系のサービスだといえるでしょうか。
もちろん、インターネットの技術に長けたユーザーならこうしたサービスが登場する以前から、独自の方法で他のユーザーとの情報の共有を行っていたと思います。しかし、こうしたWeb2.0系のサービスの登場はこれまでよりもうすこし幅広いユーザー層に、より効率的に他の複数のユーザーとのあいだで情報の共有が行える機会を与えるようになっていると見ることができるでしょう。

ソーシャルブックマークサービスに関しては、livedoorやニフティなどの大手ポータルがサービスをはじめたりしていることからも徐々に幅広い層に浸透しはじめているという印象を受けます。また、ITmedia Biz.IDMarkeZine日経IT Proなどのニュース系のサイトが、記事ごとのページにはてなブックマークにブックマークができるボタンがつきはじめたことなども、ソーシャルブックマークサービスが広い層に普及しはじめ、サイトのトラフィックにも無視できない影響があることを外部のサイトも認めはじめたのではないかと考えられます。アメリカでは人気のあるソーシャルニュースサイト、Diggからのアクセスを意識した投票ボタン(“digg it”)が多くのサイトで見受けられるようになっているそうです(参考:メディア・パブ: 参加型ニュースサイト“Digg”が大手新聞社サイトを抜き去る日)。
このような最近の傾向を自社にとって影響がありそうだと見るか、そうでないと見るかは、ターゲットとしている市場によるのではないかと思います。いまのところは、普段から頻繁にインターネットを情報収集に活用しているようなユーザー層をターゲットにしている企業だったり、幅広い層に認知されている大手企業などが影響を受けやすいだろうと影響範囲を限定して考えることもできますが、全体の傾向としてより透明性の高い情報開示が企業に求められる流れはありますので、いまはまだ大丈夫と思える企業の方も意識はしておいたほうがよいのではと思います。

■EGMのメリット:1.企業イメージの向上、理解促進

さて、こうした「誰もが情報を発信しかつ共有できる時代」においては、沈黙は必ずしも金だとはいえません。企業側が沈黙することでユーザーのあいだでは情報不足による憶測が生まれてしまう場合もあるからです。なにかしらの要因で企業イメージがダウンしてしまっている時期であれば尚更でしょう。
悪いイメージが流布してしまっている時には、企業のある一面だけをみて、すべてを評価されてしまいがちです。しかし、実際には企業の内部にも従業員による多様性が存在しているはずです。外からは見えにくい企業内部の従業員の多様な思考や行動、血の通った企業のイメージをBlogなどを通じて、日々公開し続けていくことで、ユーザーの目が悪いイメージだけに集中してしまうことを避け、企業の内部ではユーザーと同じ普通の人たちが日々業務の改善に努めているのだということを理解してもらえるようになるのではないかと思います。

実際、Blogなどを利用して、そうした企業内部の従業員の顔を見えるようにすることで、企業イメージの向上に成功している例が、海外にも日本にも存在しています。
例えば、海外では、マイクロソフトがchannel 9という従業員による映像付きBlogを主体としたユーザーコミュニケーションサイトを立ち上げています。『ブログスフィア アメリカ企業を変えた100人のブロガーたち』(ロバート・スコーブル著、日経BP社刊)によれば、channel 9で現場の風景、従業員の声を伝えるようになって以来、市場から“悪の帝国”と揶揄されることもあったマイクロソフトの企業イメージにも少しずつ変化が生まれたそうです。さらには何かトラブルが起きたときでも顧客が企業を擁護してくれるような傾向が見られるようになったということです。
日本でも同じようにはてなが自社のサービスを使って、はてなスタッフ日記を綴ることで、一般のユーザーに対してだけでなく、採用希望者やメディアに対しても好印象を与えています。

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2006年08月09日

Employee Generated Media : 1.信頼を得るために

マーケティングユニット 棚橋

6月初旬からしばらく更新が滞ってしまいました。
今日からあらためてBlogの更新を再開いたします。
まず再開後の1回目となる今回は、Blogやソーシャルネットワークサービス(以下、SNS)が注目を集める現在のインターネット環境における企業Webサイトの役割についてあらためて考えてみようと思います。

■Employee Generated Mediaとしての企業サイト

BlogやSNSなど、一般のインターネットユーザー自らが情報を公開、発信するWebの媒体を総称して CGM(Consumer Generated Media)と呼ぶことがあります。これまで発言する機会を(あまり)与えられておらず、一方的な情報の受信者と見做されていた消費者が、CGMの普及により情報の生産者の側にも立てるようになりました。このことはこれまでのマーケティングの流れを大きく変える影響力をもつのではないかと思います。好きや嫌いも、賛同も反対も、情報の生産者となった消費者は自分の考えを述べられるようになったのですから。そして、その声は緊密なつながりをもったネットワーク上であっという間に他のユーザーにも広がっていく可能性ももっているのですから。

これになぞらえ、企業のWebサイトを Employee Generated Media=EGM と捉えてみてはどうかと考えています。employeeという言葉の響きは「雇われているもの」という印象を与えたりもしますが、ここではそうした意味ではなく、企業の現場で実際に顧客に提供する価値を生み出す仕事に従事している従業員という意味で使っています。
CGMと対比したのは、これまでの企業広報やマーケティング・コミュニケーションにおいては、従業員も消費者同様に「声なき人たち」だったと思うからです。企業はマーケティングにおいて「顧客の生の声」を必要としますが、同じように顧客の側から見れば、反対に「企業の生の声」を聞きたがっているのではないかと想像できます。最近、SNSのコミュニティなどを利用して企業がプロモーションを行ったものの、ユーザーとのコミュニケーションがうまくいかず、炎上~閉鎖に追い込まれたというニュースも見かけたりします。これなどはユーザー側が「企業の生の声」を求めているにもかかわらず、企業側は従来どおりのマーケティングによくありがちな作られたキャラクターによる応対を行おうとしたために表面化した両者間の大きな亀裂を感じさせるものだったりします。

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