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このコーナーでは、企業でWebサイトの運営に携わっている方、マーケティング部門等でWebの活用法について考えておられる方向けに、Webマーケティングの実践のための手法やノウハウ、事例をご紹介していきます。市場に出回る書籍や雑誌では論じられることない、Webマーケティングの最前線に触れていただければと思います。

2005年07月12日

レギュレーションの改正

マーケティングユニット 棚橋

雑誌『広告批評』7月号の特集で、アーティスト・村上隆氏と美術評論家・椹木野衣氏の対談「リトルボーイへの旅:スーパーフラットプロジェクトとは何だったか」という対談の中の村上氏の発言に非常に興味深いものがありました。

「僕からすると、ビジネスモデルを置いておいてというわけにはいかなくなるというのが、いま、日本のある意味での大きな問題だと思うんです。F1でB・A・R HONDAがレギュレーション違反とされて二試合放棄させられたのを見て、またかよって思ったのは、技術力で勝負を挑めば、日本が勝っちゃうから。だからこそ、裏でのネゴシエーションがものを言ったりする。

(中略)

これは僕らアート業界にとっても他人事じゃない。マンガとかアニメとか「ゆるキャラ」とか、素晴らしいと言われていても、この後は素晴らしくなかったという風にレギュレーション改正されることが目に見えている。僕はいま、アートのビジネスの中で勝っているけれど、明らかに二年後にはレギュレーション改正がくるなというのが見えるわけ。そうなったときに、「ずるいよ」と反発するのではなく、「だよね」って言える準備を整えていないといけない」

この村上氏の発言は、アーティストの市場におけるサバイバルという狭い観点だけでなく、ビジネスにおける企業およびブランドのサバイバルという広い観点でとらえた際に非常に興味深いもののように思えます。
村上氏の言うレギュレーションというキーワードも、本来的な意味でのきちんと定められたルールとしてのレギュレーションという以上に、ビジネスにおけるトレンド、流れという意味で広くとらえると、いろんなことが考えられます。

ビジネスにおいては、企業も、村上氏のように個人で活躍している人も同じように市場でサバイバルしていくことを考えなければ、既存の競合他社や新規参入者、代替品の脅威や、顧客自身のニーズの変化によって激しく移り変わる市場の中で取り残される危機は常に存在していると言えます。
マイケル・ポーターが5つの競争要因(5 Force Model)としてあげている「1.業界への新規参入業者の脅威」 「2.業界への代替製品の脅威」「3.供給業者(仕入先)との交渉力」「4.買い手(顧客)との交渉力」「5.既存業者間の自社との競合」の5つのそれぞれが、企業に存続の危機をもたらしかねないレギュレーション改正のきっかけとなりえます。

村上氏の指摘をすこし乱暴に解釈すれば、そうした市場変化の中には「技術向上による変化」と「ネゴシエーションによる変化」の2つが少なくとも存在するということになります。
しかし、技術向上による変化であろうとネゴシエーションによる変化であろうと、変化に適応できない企業はその後、サバイバルできないという点では共通です。
「レギュレーション改正」は、それが技術向上を原因にするものであろうと、ネゴシエーションを原因にするものであろうと、企業にこれまでのビジネスのやり方に変更を促します。
市場の流れに沿って顧客にも社会にも認められるよう努力し、結果も出してきた真面目な企業がある日、突然、「レギュレーション改正」を受けた市場価値の変化により、これまでの顧客にも社会にもそっぽを向かれてしまうという危機とは無縁な企業はどこにも存在しません。

有名なビジネス書『イノベーションのジレンマ』(翔泳社刊)で、著者のクレイトン・クリステンセンが取り上げているのも、こうした劇的な市場変化(=レギュレーション改正)を受けた企業の隆盛と衰退の歴史です。例えば、メインフレームコンピュータがミニコンピュータにシェアを奪われ、さらにはそのミニコンピュータがパソコンにシェアを奪われるといった事態を見ると、それが単に技術の向上による自然発生的なレギュレーションの変化というよりも、市場に新規参入をしてきた新興企業の効果的なマーケティングによるものであることがわかります。
(『イノベーションのジレンマ』についてのもう少し詳しい情報は、「ランチェスターの法則」をご覧ください)

また、最近ではこれまでビジネス、マーケティングにおける話題を集めていた「ブランディング」という手法に影響を与える動きが見られるように思います。
以前に紹介したコーポレート・レピュテーションに関する動きがそれです。
これまでブランド資産(ブランド・エクイティティ)として、どちらかというと顧客を中心にした企業価値を高めることを目指したブランディングの考え方に対し、顧客以外のすべてのステークホルダーを対象にレピュテーション資産としての企業の評判≒企業価値を向上することを目的としたレピュテーション・マネジメントへの社会的関心の以降は、そのまま、これまでブランド・マネジメントのサポートをビジネスにしてきた代理店にも打撃を与えかねません。

さらには、私たちのWeb制作業界でいえば、これまでのテーブルレイアウトによるHTMLの制作から、Web標準準拠によるHTML制作への移行は、Web制作会社の制作技術に大きく影響を与えるもので、これに取り残されたWeb制作会社は市場から取り残されかねない重大な変化であるとも言えます。
(参考:Web標準Blog

こうした市場の変化の影響を回避し、市場でサバイバルし続けるためには、弊社社長がBlog「経営者の独り言」(組織にとってスピード化とは?)に書いているように、「良い意味でも悪い意味でも社会で起こっている些細なこと、我々とは縁が遠いと思えることでも、自分達のことだと思い、自分達の環境に当てはめ、可能なことからスタート」できる姿勢を常に持つことが必要なのでしょう。
その実行のためには、Webコミュニケーションにおいても常に、過去・現在・未来といった3つの時間空間を意識して、現在だけにとらわれないコミュニケーションを行っていくことが重要なのだろうと思います。

そして、村上氏が言うように、<そうなったときに、「ずるいよ」と反発するのではなく、「だよね」って言える準備を整えていないといけない>のでしょう。

さて、次回は参照元、ページ経路を分析すると題して、アクセスログ解析の具体的な活用法について取り上げたいと思います。お楽しみに。

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