このコーナーでは、企業でWebサイトの運営に携わっている方、マーケティング部門等でWebの活用法について考えておられる方向けに、Webマーケティングの実践のための手法やノウハウ、事例をご紹介していきます。市場に出回る書籍や雑誌では論じられることない、Webマーケティングの最前線に触れていただければと思います。
2006年10月23日
企業内コミュニケーション
マーケティングユニット 棚橋
gooリサーチが2006年10月11日に公表した「企業内コミュニケーションの実態」に関する調査結果によると、社内で「誰とのコミュニケーションに不足を感じるか」という質問に対する答えで、多かったのは「部署を超えた社員間でのコミュニケーション」という回答で65.3%を示しています。これが社員数規模が多くなりにつれ、そう回答した人の数も増え、1,000人以上の規模の会社になると、78.0%もの人が「部署を超えた社員間でのコミュニケーション」に不足を感じているようです。
誰がどんな情報を持っているかわからない
調査結果をみると、1,000人以上の規模の会社では、「社内で活用しているITコミュニケーションツール」という質問には、「電子メール」91.0%、「社内イントラ」90.7%、「グループウェア」51.8%と、それ以下の規模の会社に比べてそれぞれ高い数字を示しているにも関わらず、先のような「部署を超えた社員間でのコミュニケーション」に不足を感じている人が78.0%もいるということです。
この結果が興味深いなと感じるのは、次の「ITを活用したコミュニケーション、情報共有の問題点」として、「誰がどんな情報を持っているかわからない」と回答した人がもっとも多く、全体で53.2%、1,000人以上の規模の会社では80.5%もの人がそう回答している点です。
つまり「部署を超えた社員間でのコミュニケーション」に不足を感じる主な理由としては、誰に聞くべきかがわかれば質問も可能なのに、「誰がどんな情報を持っているかわからない」ため、そこに不足を感じるのではないかと考えることができるような気がします。
業務知識やノウハウが共有されていない
「経営層と一般社員との間のコミュニケーション」にも不足を感じると答えている人が多いのですが、こちらはある意味では「誰がどんな情報を持っているかわからない」という点ではそれほど困ることはないのでしょう。
そのため、「社内の情報共有状況」に関する質問でも、「ほとんど共有できていない」(15.7%)、「あまり有効に共有できていない」(65.5%)で8割以上の人が社内の情報共有が不十分であると答え、「情報共有ができていない内容」として「業務知識やノウハウ」(74.2%)が「経営層のビジョンや事業の方向性」(43.1%)を大きく引き離す結果となっているのではないでしょうか?
ブログスフィアでは誰がどんな情報を持っているかわかる
自分の日常を考えてみると、意外と誰がどんな情報を持っているかは外のBlogを見ているほうがわかりやすかったりします。それは社内と比較してどうかという話ではありません。ただ、ブログスフィアでは、本来、見知らぬ人同士であるにも関わらず、互いに自分が何を考え、どんなことをやっているかをBlogに日々書き綴っているので、意外と「誰がどんな情報をもっているか」がわかりやすい環境が自然とできてくるということがあると思います。その意味では、Blogはパーソナル・ブランディングのメディアとしてうまく機能しているなという印象があります。
とはいえ、だからといって、これは社内情報共有のために社内Blogや社内SNSを導入しましょうという話にすぐにつながるものではないと思っています。
きわめて当たり前のことなのですが、Blogが情報共有のツールとして機能するためには、情報を積極的に発信しようという人がいないとはじまりません。つまり、企業内に情報を他の人や他部署に向けて、積極的に発信していこうという文化がなければ、いくら社内にBlogやSNSを導入したところで、うまく機能しないのではないかと思います。
「部署を超えた社員間でのコミュニケーション」に不足を感じている人が78.0%もいるということは、裏を返せば、それだけ他部署に向けた情報発信がなされていないということでもあると思います。78.0%もそう答えているとなると、不満を述べている側も、実は自分のほうも他の人に対して情報を発信していかなくてはならない立場である可能性が非常に高いはずです。つまり、「誰がどんな情報を持っているかわからない」と言っておきながら、自分でも「どんな情報を持っているか」を他人にちゃんと伝えられていない確率がとても高いということです。
しかも、ITコミュニケーション・ツールが充実した大手の企業ほど、不足を感じる人が多いというのですから、これは単にツールの問題ではないと考えたほうがよいでしょう。
以前に、「Employee Generated Media」というエントリーでWebを使って従業員が外部にコミュニケーションを行っていく必要性について書きましたが、マーケティングにおいては外部へのコミュニケーションと同時に、企業内部でのインターナル・マーケティングも同じくらい重視されます。
その意味では、従業員個人が考えや意見を積極的に述べられるような社内環境、企業文化を育てていくことが、今後の情報社会ではとても重要なことではないかと、この調査をみて感じました。