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このコーナーでは、企業でWebサイトの運営に携わっている方、マーケティング部門等でWebの活用法について考えておられる方向けに、Webマーケティングの実践のための手法やノウハウ、事例をご紹介していきます。市場に出回る書籍や雑誌では論じられることない、Webマーケティングの最前線に触れていただければと思います。

2006年10月16日

マーケティング・インテグレーションの再設計

マーケティングユニット 棚橋

先日、ネットイヤーグループとインプレスR&D社の共催による「第4回インターネットマーケティング最新動向&技術セミナー テレビCM崩壊を超えて~インターネットマーケティング2.0」にお邪魔させていただきました。
CNET Japanでブログも書いていらっしゃる渡辺聡さんの講演内容が興味深かったので、ここですこし取り上げさせていただきます。

マス広告の効果と役割の絶対性への疑問

内容としては、大きく「テレビCMは本当に崩壊したのか?」という話から、ネットレイティングス社が最近公開した調査データ「月間100万人以上の訪問者を集め、「メガメディア化」が進む企業サイト」を元に、自社サイトがマスメディア、DMや電話などのダイレクトマーケティングに並ぶ、第3のメディアとして有効性が高まっていること、そして、そうしたWebの状況を利用して成功を導いている例として、コーポレートレベルでは本田技研工業の企業サイトの戦略、効果測定の話を、プロダクトレベルではアニメーション映画「時をかける少女」の口コミの話を、ケーススタディとして紹介されていました。

まず最初の導入としての「テレビCMは本当に崩壊したのか?」という部分では、テレビCMに関しても明確な費用対効果を求める米国トヨタの「番組関心度調査」の事例(参考:日経ビジネス オンライン:トヨタが米テレビ界に一撃「印象に残らない番組はダメ」)や、松下電器社がFF式石油温風器の欠陥問題にともない、「ナショナルから大切なお知らせとお願い」の告知広告をほかの商品CMを完全に打ち切って差し替えたこと、そして、年末商戦の時期にも関わらず、販売数に大きな影響がなかった事例などを取り上げながら、マス広告周辺で起きている「その効果と役割の絶対性への疑問」について紹介されていました。
このあたりは、さらなる検証も必要でしょうと条件つきで渡辺さんもお話になられていましたし、すぐに「テレビは控えてネットへ」という単純な話ではないと理解しております。

ジェニファー・アーカー教授の「強いブランドの4つの特徴」モデル

そうしたお話をされる中で渡辺さんは、ブランド論では著名なデービッド・A・アーカーの娘さん、ジェニファー・アーカー教授の「強いブランドの4つの特徴」モデルを援用しながら、「ショートメッセージからストーリーへ」「着飾って隠すことから誠実な情報公開へ」という現在のブランディングに求められている変化のベクトルを示しておられました。

ジェニファー・アーカー教授の「強いブランドの4つの特徴」モデルとは次の4つです。

「パーソナリティがある」という部分ではテレビCMでのショートメッセージより、Webなどで展開されるストーリーや継続性のあるコミュニケーションのほうが確かに向いているといえます。
また、「(ブランドではなく)関係を管理する」という意味では、BlogやSNSなどのCGMの台頭によって、ユーザーが積極的に参加し、コミュニティやネットワークの中で自然と口コミが発生する現在の環境においては、これまでのように企業がかたくなに自社のブランドイメージを管理しきることは実質的にむずかしくなっているともいえ、それよりもこうしたユーザーのコミュニティとの関係をいかに築くかという点に重点が置かれるようになっているのではないかとも感じられます。
「失敗する」という点では、まさに先の「ナショナルから大切なお知らせとお願い」の事例が当てはまるのでは、と渡辺さんはおっしゃられていました。

このあたり非常に興味深く聞かせていただいたのは、共感できる部分も多かったからです。
例えば、「パーソナリティがある」という部分だったり、「着飾って隠すことから誠実な情報公開へ」といった部分では、すこし前に当Blogでも書かせていただいた、Employee Generated Mediaというアイデアとも関係してくるのかなと思います。

マーケティングの4Pとリソースのマネジメント

そうした変化の中で、当然、話が出てくるであろうことは、マーケティングのバランスを統合的な視点でいかにマネジメントしていくか?という課題だと思います。
単にプロモーションの中での配分をマスとネットでどう分けるの?という話だけではなく、そもそもテレビを控えてプロモーション予算がすこし浮かせられる分をプロダクト開発の予算に回せるのではという話だったり、チャネルにはどれだけ予算配分しましょうかという話も含めて。
当然、企業のリソースは単にお金だけじゃなく、人やモノといった部分もありますから、そこまで含めてマーケティング・インテグレーションをどう再編していきましょうかという課題もこれから企業内で議論されるのだろうと思います。

実際、企業のマーケティングのコンサルティングをお仕事にされている渡辺さんもBlogでそのことをセミナー終了のご報告とともに書かれていらっしゃいます。

実際、予算配分の検討が各社で行われていたりというのはありますが、単純にマスはダメでこれからはネットだとかいうのではなくて、何をどう使うかというのが先決ですし。根っこを辿るとビジネス設計とプロジェクトもしくはプロダクトサイクルの予算をどこに振り分けるかという話が出てくるわけです。

SW's memo / 渡辺聡事務所: マス広告は全否定されるべきもの・・なはずが無いですよねという話とセミナー無事終了の話

これまでWebでのマーケティングといえば、プロモーション、コミュニケーションの話だったり、Eコマースなども含めると販売チャネルの話になったりして、マーケティングの4Pでいうところの「プロモーション」と「プレイス」に集中していたわけですが、これからは「プロダクト」「プライス」といった部分でも、Webのマーケティングが関わってくるのかなと思います。

「プロダクト」という意味では、カーナビのネット対応、ネット家電などの話題からWebアプリケーションを製品に含めたものが登場してくるのではないかと予想されますし、先行事例としてはiPod+iTunesを思い浮かべることは可能ですし、いわゆるネットバンキングなどもある意味では製品・サービスの一部をWebで代替していると捉えることは可能でしょう。
「プライス」という面では、ジャスアイデア・レベルでも現時点ではあまり具体的なイメージが浮かびませんが、オープンソースを利用した製品・サービスが無料の部分と有料の部分の切り分けをうまく設計して、ビジネスモデルを構築している部分などを想起するといいのかもしれません。

今後、どのようにマーケティング・インテグレーションの再設計が行われていくかは、まだまだ研究および議論が必要だと思われますが、とりあえず思うのは、上記のようなマーケティングの4Pとヒト・モノ・カネのリソースをそれぞれ縦軸、横軸としたマトリックスで、自社のWeb戦略を含めてマネジメントをはじめることは可能ではないかというのが1つのアイデアです。

こんなことを考えると、時代は着実に動いているのだなという思いをあらためて強くします。

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