このコーナーでは、企業でWebサイトの運営に携わっている方、マーケティング部門等でWebの活用法について考えておられる方向けに、Webマーケティングの実践のための手法やノウハウ、事例をご紹介していきます。市場に出回る書籍や雑誌では論じられることない、Webマーケティングの最前線に触れていただければと思います。
2005年03月04日
「Webサイトはインフォメーション・アーキテクチャー」が間違いの元
マーケティングユニット 棚橋
「Webサイトはインフォメーション・アーキテクチャーである」ということはよく言われます。しかし、Webマーケティングを本当に考えようとすれば、Web制作会社がよく口にするこの呪文が大きな間違いの元であることに気づきます。Webマーケティングを考える側にしてみれば、とうぜんながら、何よりそれはマーケティング・コミュニケーション・ツールです。しかしながら、長い間、「Webサイトはインフォメーション・アーキテクチャーである」と言われ続けてきたせいかどうかはわかりませんが、Webサイトの改善といえば、情報設計を見直すということだとでもいうかのように、誰もがリニューアル構築ばかりを考えたがります。
しかし、他のマーケティング・コミュニケーションでそんな改善をするでしょうか? たとえば、雑誌広告や中吊り広告などで、既存の広告のメッセージやイメージを変えずにレイアウトだけ変更するなんてことがありえるでしょうか? むしろ、重視されるのは、メッセージの中身だったりするはずです。あるいは、メディアなどの露出場所やタイミングなどを変更したりするのかもしれません。
にもかかわらず、Webサイトの改善となると、情報設計を見直し、すこしデザインを変更しただけのリニューアル構築を思い描いてしまうのはどういうことなのでしょう。
Webサイトはインフォメーション・アーキテクチャーであるという以上に、コミュニケーション・ツールです。
コミュニケーションである以上、スタティックに構築を行なえばいいというわけではなく、よりダイナミックにユーザーに対して情報を発信し、ユーザーの反応に興味を示すことが重要なはずです。「Webサイトはインフォメーション・アーキテクチャーである」という言葉と同時に、「Webサイトは運用が大事だ」という話も聞いたことがあるかと思います。マーケティングをひとつの目的とした企業のWebサイトである以上、ユーザーが見込み客であろうと、既存顧客であろうと、顧客の獲得あるいは関係性維持を目指して、継続的なコミュニケーションを行なうのは、何より重要なことではないでしょうか。
コミュニケーションが継続的で、かつ、定期的であれば、ユーザーのリピート訪問も期待できるようになります。また、ユーザ視点に立ち、きちんとしたマナー(これこそがWebサイトがインフォメーション・アーキテクチャーであることの重要性)で構築されていれば、自然とSEO対策の効果も得られるはずです。
以前にポジショニングの話をした際にも書きましたが、自社(あるいはブランド)が何者であり、何を、どんな風にもたらすのかを、ターゲットとするユーザーに継続的に伝えていくコミュニケーションの姿勢こそが重要です。
Webサイトはインフォメーション・アーキテクチャーであることや、SEO対策、ユーザービリティ設計、アクセシビリティといった、Webサイト構築のお作法やノウハウは、そうしたユーザーに対する真摯な姿勢があってはじめて効果を発揮するものなのです。