このコーナーでは、企業でWebサイトの運営に携わっている方、マーケティング部門等でWebの活用法について考えておられる方向けに、Webマーケティングの実践のための手法やノウハウ、事例をご紹介していきます。市場に出回る書籍や雑誌では論じられることない、Webマーケティングの最前線に触れていただければと思います。
2005年03月01日
Webサイトの成熟度で、ターゲットとなるユーザー層は異なる
マーケティングユニット 棚橋
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Webサイトのコンテンツ案などを考える際、いま、どんなユーザーが実際にWebサイトを訪れているかを把握しているでしょうか? あるいは、新規のコンテンツでユーザーとのコミュニケーションを考える際、ターゲットとして想定しているユーザーは、現在の自社サイトのユーザーとして適しているかと考えたことはあるでしょうか?
Webサイトの成熟度によって、ターゲットとなるユーザー層はまったく異なる層となります。スタンフォード大学のエベレット・M・ロジャース教授が提唱したイノベーションの普及に関する理論、イノベータ理論は、見事なまでに、Webサイトの成熟度にもあてはまります。
Webサイトの成熟度の初期段階でのアクセスユーザーのほとんどは、イノベーター=革新的採用者としての自社社員や競合企業ばかりという状況です。その次の段階で、すこしWebサイトのコンテンツを改善し、SEO対策なども行なうと、オピニオンリーダー=初期少数採用者としての見込み客がサイトを訪れるようになります。この時点のユーザーはイノベータ理論でのオピニオンリーダー同様、目新しい企業、目新しいブランドだから、そのWebサイトに興味をもつユーザーです。もちろん、目新しいだけで実利をもたらしそうになければ、オピニオンリーダーにさえも見向きもされないでしょう。
このあとに続くのが、Webサイトの効果を大幅に高めることになる、アーリー・マジョリティ=初期多数採用者や、レイト・マジョリティ=後期多数採用者になるのですが、実はこうしたユーザーをWebサイトに呼び込めるようにまでWebサイトの成熟度を高めるのは、そう簡単なことではありません。
多くのサイトは、こうしたWeb成熟度に応じたアクセスユーザーの違いを考慮していないために、現状のアクセスユーザーにはあまり価値をもたないコンテンツの開発や運用に力を入れてしまいがちです。
例えば、オピニオンリーダーが多く訪れている段階で、顧客の事例などを数多く扱うのは、大きな効果は期待できません。オピニオンリーダーは他の人が使っているから、他社が採用しているからという理由で、購買決定を行いません。事例によって、製品をわかりやすく伝えるという意味ではまったく無意味ではありませんが、同じような事例を顧客を変えて並べるのは、意味をなしません。
逆に、オピニオンリーダーが求めるのは、その企業が他にないどんな技術や製品をもっていて、それが自分達にどんなメリットをもたらすのかという点です。オピニオンリーダーは他の人や他社が利用しているということで安心感を得るのではなく、しっかりとした技術やノウハウ、思想をその企業が持っているかどうかということから安心感を得ます。
一方で、アーリー・マジョリティが求めるのは、製品が話題になっていて、しかも、その製品を実際に使っている人がいるということです。顧客の事例やお客さんの生の声(評価)などがわかるコンテンツが役立つのは、アーリー・マジョリティがWebサイトに訪れるようになってからのことなのです。
こうしたことを考えると、いつどのようなコンテンツをWebサイトに追加するかという問題を、Webサイトの成熟度の把握せずに考えることは非常に非効率なことだといえます。PULL型のマーケティングツールであるWebサイトでは、いかにターゲットとするユーザーにWebサイトに来てもらえるかを考えることは非常に重要であり、それはSEO対策などの集客手段だけでなく、アクセスユーザーのリピートを喚起するためにはどんなコンテンツが必要なのかを考えることも同時に必要になります。そのためにも、いま、実際にWebサイトの成熟度がどの程度かを、ログ解析を中心とした分析により現状把握を行ない、現在のターゲットユーザーへの訴求のためにはどんなコンテンツが必要なのか、コンテンツ開発のスコープを定めることが重要なのです。