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このコーナーでは、企業でWebサイトの運営に携わっている方、マーケティング部門等でWebの活用法について考えておられる方向けに、Webマーケティングの実践のための手法やノウハウ、事例をご紹介していきます。市場に出回る書籍や雑誌では論じられることない、Webマーケティングの最前線に触れていただければと思います。

2005年05月02日

ワン・トゥ・ワン・マーケティング再考 ~顧客を知る~

マーケティングユニット 棚橋

前回の「Webユーザビリティに対する大きな誤解」では、Webユーザービリティを考える上での対象が「一般的な人間」ではなく、特定の用途をもった「ユーザー」であることについて書き、特に企業サイトや商用サイトではユーザー≒顧客であり、Webユーザビリティを検証、設計する際には、専門家は企業の側と顧客の側の両方を知ることが必要だと書きました。いまやユーザビリティの専門家ならずとも、Webサイトの制作に関わるものには、少なからずマーケティングの視点が必要とされる時代が来たようです。

ところで、顧客の立場で考える、顧客志向が重要だというのは、どこの会社でも言われることです。また、マーケティングにおいても、顧客を知ることが重視され、マーケティング・リサーチに大きなコストをかける企業もあります。
ですが、いまやこの物余りの時代に、顧客を知るというのはどういうことかをあらためて考えてみる時期ではないかと思います。これまでのマス・マーケティングの時代が終わり、リレーションシップ=顧客関係性が重視される時代のマーケティングにおいて、顧客を知るということが何を意味するかはもう一度、考えてみるべきでしょう。

例えば、顧客ニーズという言葉があります。しかし、果たして本当にそんなものがあるかは疑問です。もちろん、ニーズはあるはずです。ただし、それがいわゆるマーケティングの教科書に書かれているような存在の仕方であるかは疑わしい。少なくとも、よく行なわれているマーケティング・リサーチにわかるような形では、顧客ニーズは存在していないのではないかと疑うべきである気がします。

私自身、営業活動をしているので、お客さんにこれが欲しい、あれが欲しいという話をいただきます。しかし、大抵の場合、よくよく話を聞いてみると、お客さん自身が持っている課題を解決するものは、お客さん自身が欲しいと言っているものとは違っていたりします。マーケティング的にいえば、少なくとも営業の現場ではウォンツは必ずしもニーズとは一致しないことが多々あります。

そんな場合、営業する私の側の選択肢は2つあります。
1つはウォンツを優先してお客さんが欲しいといったものを提供すること。 もう1つはお客さん自身の課題を解決するには違う手段のほうがいいことを説明して、お客さん自身に自らの潜在的なニーズに気づいていただくことです。
どちらがいいかはここでは問題にしません。重要なことは営業の場面ではそういうことが頻繁にあるということです。どういうことでしょう? お客さんは自分のニーズに気づいていないことが往々にしてあるということです。

これはおそらく私たちの業界に限ったことではないはずです。商品をただ並べただけでは売れません。自分のニーズに気づかないお客さんに商品を買ってもらおうとしたら、単に商品を並べるだけ、商品を改善するだけでは売れません。マーケティング・コミュニケーションが重視されるのは、その意味においてです。お客さん自身のニーズを喚起するコミュニケーションがなければ商品の価値はお客さんに共有されずに終わることもあるのです。
もちろん、お客さんはそれぞれ異なるニーズを持っています。それゆえ、コミュニケーションは必然的にワン・トゥ・ワンにならざるを得ません。その場合、まず重要なことはなんでしょう? それはごくごく当たり前なことでありながら、意外と軽視されていること、お客さんを識別するということです。顧客を知るといいつつ、私たち、マーケティングに関わる人間がおろそかにしてきたのはまさにお客さん一人ひとりを識別するということの大切さではないでしょうか?

優秀な営業マンなら当たり前にやっているはずのお客さん一人ひとりを識別し、その人のこれまでの購買履歴や好み、経済状況、商品知識などを総合的に分析した上での「おすすめ」がどれだけ重要かを知っています。その一方で、本来、「売る仕組み」を作らなければならない立場のマーケターが、残念ながらそのあたりのことをよくわかっていなかったりするわけです。

それでは売上があがるわけがありません。

多くのマーケターは「顧客を知る」と都合のいいことをいいながら、実は一切、お客さんとのリレーションシップについて本当に理解していないようです。

商品力だけで物が売れる時代はとっくに終わっています。
売上=商品単価×販売個数ではありません。

売上=顧客数×商品単価×顧客の一回購入個数×顧客の購入頻度です。

売上には、これだけ顧客が鍵を握る要素があるのに、商品開発やマーケティング・コミュニケーションの内容の参考のためだけに、顧客を知ろうなどと考えるのはナンセンス以外の何物でもありません。

これまでのマーケティングの考え方では、市場をセグメントするのに、対象顧客のデモグラフィックス・データサイコグラフィックス・データを用いるのが主流でした。しかし、それでは顧客一人ひとりを識別することはできません。
一方で、顧客の心理に眠ったニーズを掘り起こそうとするマーケティング・リサーチの試みも同じく顧客一人ひとりを捉えようとはしていませんでした。
一方、ワン・トゥ・ワン・マーケティングでは、基本的に顧客一人ひとりを識別した上で、事実としての行動で管理することを目指します。それはワン・トゥ・ワン・マーケティングの目的とするものが、顧客とのリレーションシップを強化することで、顧客生涯価値(Lifetime Value=LTV)の高い顧客の育成であることとも深く関係します。これはマス・マーケティングの考え方とは180°異なる方向性を持つものです。買わせるまでは手厚い(?)マス・メディアによるコミュニケーションで顧客をもてなしながら買ったあとのフォローを基本的に考えないマス・マーケティングと、むしろ、買ったあと(行動の結果)の後追い的なコミュニケーションにより顧客の育成を目指すワン・トゥ・ワン・マーケティングでは、そもそもの発想からして異なるものです。前者があくまで商品を中心した発想だとすれば、後者は行動するリアルな顧客一人ひとりを中心に発想を行なうものです。

その意味で、ワン・トゥ・ワン・マーケティングは、より営業の現場=売り場に近い発想が必要となるのかもしれません。私たちがECサイトのコンサルティングを行なう場合でも、売上データ、アクセスログ解析を合わせ見ながら、売れる商品単位の分析ではなく、買ってくれる顧客単位の分析を行なった上で施策を実施したほうが効果に結びつきやすかったりもします。

マス・マーケティングの時代からリレーションシップ・マーケティングの時代への移行にともなう「売れる仕組み」の変化のひとつの特徴は、「作る現場を中心にした売る仕組み」から「売り場を中心にした売る仕組み」への移行にあると言えそうです。

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