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実践!Webマーケティング:Blog

このコーナーでは、企業でWebサイトの運営に携わっている方、マーケティング部門等でWebの活用法について考えておられる方向けに、Webマーケティングの実践のための手法やノウハウ、事例をご紹介していきます。市場に出回る書籍や雑誌では論じられることない、Webマーケティングの最前線に触れていただければと思います。

2006年04月28日

体感するWeb2.0

マーケティングユニット 棚橋

最近、Web2.0的なもの(例えば、Blog、RSS/Atom Feed etc.)を顧客企業様に理解していただくむずかしさを感じています。
もちろん、技術レベルの話や、直接的に何が可能になるかを知っていただくことはそれほどむずかしいことではありません。比較的、理解していただきやすいのはAjaxですが、それでも本質的な理解にはいたっていない気がします。
その理由はなんとなくわかっていて、というのは、Web2.0的な技術が基本的に見えないものを「見える化」する技術やデザイン手法だったりするからだと思います。

■情報量の指数関数的増加とWeb2.0

Web2.0とは何かを切り口にはいろいろありますが、私はWeb2.0を「1つのチップ上の部品数は約2年ごとに倍になる」というムーアの法則が情報の量そのものにも適用される情報社会において、指数関数的に増え続ける情報量に深く関係したものとしてとらえています。

そもそもIT(情報技術)そのものが文字通り情報を扱う技術ですが、その中でもWeb2.0はまさにいまこの現在において、増え続ける情報量をいかに対処するかに関する技術であり、また情報量の増加そのものを加速させる技術でもあると考えることができると思います。
そうした指数関数的に増え続ける情報量への対応という視点でみれば、Googleに代表される検索技術、また、その検索技術のキーワードマッチングを利用したリスティング広告(SEM)、ユーザーによる情報分離であるFolksonomy(ソーシャル・タギング)、ソーシャルブックマークをはじめとする集合知の利用、非同期通信技術であるAjax、microformatsをはじめとするセマンティック技術、そして最新情報を無駄なくスピーディーにチェックすることを可能にするRSS/Atom Feedなどが、なぜ必要とされ、脚光を浴びているのかも理解しやすくなりますし、逆に情報量を増やす技術としては、BlogやSNSなどのCGM(コンシューマ・ジェネレイテッド・メディア)、マッシュアップなどによる情報の二次利用~複製なども同じ文脈に位置づけることが可能ではないかと思います。

graph

■大きすぎて見えない

上に示したグラフのように指数関数はある時点で一気に増加します。
おそらく、こうした勢いで情報量が増加している事実そのものが普通の人には体感しにくかったりするのでしょう。Web2.0をいまひとつ体感的に理解できないのも、それが深く関連している情報量の増加そのものが非常に体感しにくいものであるからではないかと感じます。
ようはその増加量があまりに大きすぎて人間の普通の感性では見えないのではないかと思うのです。

例えば、以前にも何度か数字を持ち出しましたが、Googleは約80億以上のURLをインデックスしているといいます。
また、「ファインダビリティあるいは検索性の向上」でも示したようにオンライン型RSSリーダーであるfeedpathには日々50万件を超えるRSS/Atom Feedが登録されます。これも年間でみると2億件近い数字になります。
feedpathはもちろん、Googleの数字でさえもWeb上に存在する情報の一部でしかありません。
その一部の数字でさえ、私たちが普通に実感するには大きすぎる数字だったりします。

■情報量の増加速度を体感する瞬間

しかし、その数字を体感としてなんとなく感じている人たちもいます。
アルファブロガーと呼ばれる人たちは間違いなくそれを体感しています。
そうでない人でも実際に自分でBlogをもっている人で、それまでそんなに日々のアクセスのなかった自分のBlogがある日、1つのエントリーを書いたのをきっかけにそれまでとは比較にならないほどのアクセス数に見舞われたという経験を持っている人なら、その情報量の増加速度を数字としてではなく、体感として理解しているのではないでしょうか?
多くの場合、その急激なアクセスは、はてなブックマークで大量(例えば100以上)のブックマークがあったり、有名ブロガーのBlogがそのエントリーの内容に言及してあったりする場合などです。そうなると、その後に他のブロガーがさらにそのエントリーに対してトラックバック+意見や同意を表明するエントリーを書いたりすることで、たった1つのエントリーが瞬く間にネット上に広がっていったりします。
その速度は本当に驚くほどのスピード感を持っており、これは本当に体感してみないとなかなか説明だけではわからないものだったりします。

■体感による暗黙知を「共同化」する

ナレッジ・マネジメントの分野における第一人者である野中郁次郎氏が提案した知識創造のプロセスモデルにSECIモデルというものがあります。このモデルでは、最初に個々人がもっていた暗黙知を徐々に組織の中で共有しながら形式知化していくことで知識創造を行っていくプロセスがモデル化されています。

SECIモデルはあくまで企業などの組織の中での知識創造を前提としたモデルですが、個々人の体感である暗黙知をより多くの人が利用可能な形式知に変換するプロセスを考える上では非常に参考になるモデルではないかと思います。
先に書いたようにWeb2.0のインパクトはアルファブロガーであれば当然のように体感している暗黙知であり、現在は彼らから他のブロガーたちへの暗黙知の伝道の段階としての「共同化(SECIモデルのS)」の段階であるととらえることも可能ではないかと思います。
ある意味では本質的にWeb2.0を理解しているのは彼らであるということも可能で、そんな彼らにとって、BlogやRSS/Atom Feed、Ajax、マッシュアップなどの個々の事象をとらえてWeb2.0を語るのはむしろ不自然と感じられていることでしょう。
その一方で先に書いたように、私たちを含めてWeb2.0を説明するものがそうした個々の事象をバラバラにとらえて理解してもらおうとしたのでは伝わらないのが当然で、それはそもそも知識創造のプロセスからして失敗するのが当然だったりするのではないかと思います。
正攻法を選ぶならまず説明する側が自身の体感としてWeb2.0を理解したうえで、その暗黙知を「共同化」する方法を探し出す必要があるのでしょう。

■見えないものを「見える化」するデザイン

その一方で実際に増え続けている情報をいかに効率的、効果的にみせるか、そして、個々の情報のファインダビリティを高めるかも、私たち、Web構築に関わるものが考えなくてはならない問題です。

このことに関しては、前回のエントリー「5W1Hで考える情報の連携」でも1つのアイデアを述べました。
しかし、アイデアを実際に有効な(というのはユーザーにとって有益なという意味で)形でWebサイトに実装するには、見通しのわるい膨大な情報の雲の中で過ごすユーザーがその情報の巨大な塊の中のほんのひとかけらに過ぎない情報に何故注目するのか?という視点が抜けていては、まともな実装にはなりえません。
そのためにはマーケティングにおいては当たり前すぎることなのですが、ユーザーを知らなくてはならない、そして、そのユーザーが晒されている環境を知らなくてはならない、それが前提なのではないかと思います。

Webがマーケティングツールとして本当の意味で価値を確立するのは、そうしたユーザーコンテクストと膨大な情報のコンテクストをマッチさせる技術やデザインを手にいれたときなのでしょう。
そのとき、マーケティングそのものがコトラーが体系化したマーケティング・サイエンスに対するマーケティング2.0となりうるのでしょう。
そのためにもWebに関する技術は、ユーザー行動の見える化、情報の見える化としてのファインダビリティの向上を含めて、2.0を超えてさらに進化していく必要があるのでしょう。

さて、次回は「総表現社会」と題してお送りします。

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