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このコーナーでは、企業でWebサイトの運営に携わっている方、マーケティング部門等でWebの活用法について考えておられる方向けに、Webマーケティングの実践のための手法やノウハウ、事例をご紹介していきます。市場に出回る書籍や雑誌では論じられることない、Webマーケティングの最前線に触れていただければと思います。

2006年04月11日

「見える化」と「集合知の利用」

マーケティングユニット 棚橋

前回のエントリー「Webの信頼性」では、犯罪学における「割れた窓理論」なども参考にしながら、Webのネットワーク内で「集合知の利用」を考える際には、情報デザイン面でも企業側が一方的に情報発信を行う場合とは異なる配慮が必要であることを指摘させていただきました。
情報の多様性や独立性を正常に維持するためには、Blogの情報デザイン1つとっても、ユーザーからのコメント、トラックバックを自社が発信する情報同様に価値あるものとして扱うことが重要であり、デザインから垣間見えるようなちょっとしたユーザーへの配慮が、ユーザーからのフィードバック情報をネガティブにもポジティブにも方向付ける可能性があります。
現在、「見える化」と呼ばれるキーワードが注目を集めていたりしますが、百聞は一見にしかずともいうように、そもそも人は視覚情報に多くをたよっている部分があります。
今回はこうした人間にとっての「視覚情報」の観点から、「集合知の利用」についてもうすこし踏み込んで考えてみようと思います。

■「見える化」と企業の不祥事への対応

「見える化」というキーワードで語られる議論を要約するなら、強い企業は異常や問題、実績や知恵、ノウハウ、顧客の声など、ビジネスを成功に導くために必要な情報を常に見える形にすることに長けており、逆に「見える化」の仕組みをもっていない企業は、市場における地位を失う危険性をもっているとされています。

例えば、相次ぐ企業の不祥事をとっても、問題が勃発した時点ですぐに原因を究明して、何故起きたのか、そして、それに対して今後どのような対応を行うことで、同様の問題が起こらないようにするかを、社会に対して示すことができれば、信頼回復が不可能なほどの打撃を受けるのを回避することが可能になるかもしれません。しかし、そうした迅速な対応ができず、外部からの注目が集まる速度に対して不釣合いなほどスピーディーさを欠き、後手後手の対応しかできなければ、たちまち1つの不祥事がそれまでの信頼性を一気に消し去ってしまうようなダメージを企業に与えることになるでしょう。

最近では、個人のBlogでもちょっとした発言をきっかけに、あっという間に"炎上"(批判的な書き込みが殺到し、収拾がつかなくなる状態)にするくらいですので、企業が不祥事に対して適切で迅速な対応ができなければ、あっという間にそうした悪評はネット上を駆け巡ることになりかねません。
そうした意味でも、企業にとっては、不祥事の発生を想定したリスク・マネジメントの重要性はより一層増してきているといえるでしょう。

■「見える化」とハインリッヒの法則

もう1つ、そもそも「見える化」の仕組みを高度に発展させている企業では、大きな問題が発生する前に、問題が小さい段階で原因を発見して、それ以上、問題が大きくなるのを未然に防ぐ力をもっているという点も指摘できるはずです。

1:29:300の法則(ハインリッヒの法則)」は、アメリカのハインリッヒ氏が労働災害の発生確率を分析したもので、1件の重大災害の裏には、29件のかすり傷程度の軽災害があり、その裏にはケガはないがひやっとした300件の体験があるというものですが、「見える化」においても企業が小さな300件の体験のうち、全部とは言わないまでもある程度、見える形になっており、29件に関しては完全に「見える化」ができ、迅速な対応ができる仕組みがあり、社内に浸透しているかどうかが、1件の大問題を未然に防げる力が企業にあるかどうかの境目となるのでしょう。

■見られる対象、見る者、そして、認識のフレームワーク

当然、この「見える化」には、見られる対象と見る者という対照的な関係がともに成立することが必要です。一方では「事実」を常に見える形にする行動が社内に根付いていることが必要であり、そして、見える形となった事実を見て、適切で価値のある判断~対応を行う行動が連続して、自律的に起こるような仕組みが必要になります。

両者は互いに連携していなくては効果を発揮しないでしょう。
いくら「事実」としての情報が上がってきても、それを適切に活用できる仕組みがなければ、そのうち、「事実」を上げる仕組みは形骸化し、意味をなさなくなります。
一方で、どんなに事実をもとにした改善を行う仕組みがあっても、肝心の事実の報告が行われないような社内風土ができてしまっていたら、やはり「見える化」は機能しません。

しかし、この両者だけが揃っていれば万全かというとそうではないでしょう。
人には視野というものがあります。視野に入っていないものは見えません。視点が定まっていなくては、企業は適切なものを見ることができないでしょう。
りんごが赤く見えるのは、りんごが太陽光の赤い光だけを反射するからというだけでなく、人間の目が赤い光線を赤と認識できるからで、実際、人間は他の動物には見える紫外線を見ることができません。
同じように、問題も必ずしも問題に見えるわけではなく、それを問題として認識できるようなフレームワークがあってはじめて問題視できるのだと思います。

■「集合知の利用」における「集約性」という要件

このことから「見える化」が単に何でも見えるようにして、見えたものに対処するだけでは達成できないことが理解できるのではないでしょうか?

企業においては、目的、GOALが明確な場合には「見える化」の仕組みを組むことは、簡単ではないにせよ、不可能なほど、むずかしいことではないでしょう。
可能な限り、情報伝達におけるレイヤーを少なくして情報の劣化を防いだり、タスク分担を明確にしつつも同じ目的を共有する人の間では、他の人のタスクに関わることでも意見や情報提供は許されるような場をつくることで、「見える化」への道を進むことができるようになります。
さらには、よくありがちなのは、1つのプロジェクトに関わる人が多い場合は、目的が共有できていても、あまりタスク分担が細分化してしまっているがために、プロジェクトの進捗状況の現状認識が共有できない場合もあります。そうなると全員が同じGOALに向かって各自のタスクには遅延がなかった場合でも、各自の足並みが揃わないためにプロジェクト全体の進捗には遅れが出てしまったりすることもあります。

これはジェームズ・スロウィッキー『「みんなの意見」は案外正しい』の中であげた「集合知の利用」の4つの要件でみれば、多様性、独立性、分散性の要件は満たされていても、もう1つの集約性という要件が満たされない状況とみることが可能かもしれません。
プロジェクトの進行において適切なマイルストーンをおく必要性があるのは、集約性という意味でとらえるとよいのでしょう。

■不確実性の「見える化」

しかし、企業が変化する市場においてサバイバルし続けるためには、目的やGOALの定まった場面でのみ「見える化」ができていればよいというわけではありません。
企業は変化する市場環境に適応して継続的な成長を続けるために、不確実な未来に対する「見える化」の仕組みをもつことも必要になるでしょう。

そのためには社内での「見える化」だけでは足りません。あるいは、既存顧客や現在、関係性を維持しているステークホルダーの情報を「見える化」しても足りないかもしれません。
かつてドラッカーが重要なのは顧客の情報よりも非顧客の情報だといったように、不確実な未来を「見える化」するためには、いかにして非顧客の情報を見える形にすることができるかということが今後はより一層重要度を増してくるでしょう。

私見では、Webにおける「集合知の利用」はそうした段階においてはじめて企業にとっては価値あるものになるのではないかと考えます。
これまでであれば、アンケート調査やフォーカスグループ調査、Webを使ったものでは囲い込みによるユーザー情報の取得などに頼らざるをえなかったマーケティング視点の外部情報の入手も、BlogやSNSなどのCGM(コンシューマ・ジェネレイテッド・メディア)によって一般ユーザーが情報発信を行うことが可能になった現在、これまでとはまったく別の外部情報の「見える化」ができるようになるのではないかと思います。
こうしたCGMによる情報発信によって、文字通り、顧客の声同様に非顧客の声が見える化されつつあるといえるのではないでしょうか。

しかし、そう言い切れるためには、前回指摘したようなWebの信頼性の問題も含め、まだまだ環境が十分に整っているとはいえません。
Web2.0とはいっても、Webマーケティングに限ればまだまだ2.0には程遠いバージョン1.xの状態でさらなる技術的な革新が必要だともいえます。

次回は「インフォメーション・オリエンテッド・デザイン」と題してお送りします。

※参考文献

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