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このコーナーでは、企業でWebサイトの運営に携わっている方、マーケティング部門等でWebの活用法について考えておられる方向けに、Webマーケティングの実践のための手法やノウハウ、事例をご紹介していきます。市場に出回る書籍や雑誌では論じられることない、Webマーケティングの最前線に触れていただければと思います。

2005年09月09日

ユーザーインターフェイス設計だけではWebユーザビリティは向上しない

マーケティングユニット 棚橋

前々回の「カタログと目録 ~売買の場における情報デザイン、ユーザビリティ~」でもすこし触れましたが、Webユーザビリティを向上させるためには、単に見た目のデザインに工夫を加えたところでどうにもならないことが多々あります。
というのも、Webサイトにおいてユーザー行動(その使い勝手)に影響を与える要素は、単にユーザーインターフェイスのデザインだけではなく、掲載される情報内容や情報内容の対象(例えば記載されている商品そのものだったり、Webサービスであればサービスそのもの仕様)、情報の記述形式、情報のカテゴライズの仕方(分類概念のユーザー行動、心理との適合性)、情報の有無や優先性などの情報設計や、そもそもの利用者と想定されるユーザーの理解、情報発信主体である企業の事業理解、企業が競争をし、ユーザーが比較対象とする競合他社のひしめく市場理解など、ユーザーインターフェイスのデザインに先立って決定・設計を行っておくべき要素が数多く含まれているからです。

したがって、Webサイトのユーザビリティ設計を行う際には、最低でも以下の手順が必要となります(マーケティング目的をもった企業サイトの場合)。

つまり、通常、ユーザビリティ改善のために行っているユーザーインターフェイス設計というプロセスの前に、5つのプロセスが必要であり、こうしたプロセスを踏まない限りは真のユーザビリティは達成されないというわけです。
すなわち、ここでのユーザビリティ設計の定義は、単に最終アウトプットとして目に見える形のユーザーインターフェイス(フロントエンド・デザイン)を対象にしているのではなく、ユーザビリティ実現のための大前提となる企業とそのターゲットユーザーに関する理解、Webサイトの具体的な目的の明確化と達成のための戦略策定、戦術としてのコンテンツ企画と個々のコンテンツのアウトライン化(階層構造化)を経た情報設計など、いわゆる上流設計にあたるすべてを含んでいます

もちろん、皆さんがすでにご存知のとおり、ユーザビリティに問題をもつWebサイトでは、期待する効果(ここでは特にマーケティング効果=Web経由での問い合わせ件数の向上、既存顧客へのクロスセル/アップセルの促進、etc.)が上がりません。

しかし、残念ながら、Webユーザビリティに関する書籍では、あくまでWebサイト一般の使いやすさを議論したものが多く、個々のWebサイトの目的やそのWebサイトを利用するユーザーのニーズや行動にまで配慮した形のWebユーザビリティを取り扱ったものはあまり見かけません。
また、国際規格としてもISO13407として「インタラクティブシステムの人間中心設計過程(Human-centred design processes for interactive systems)」がありますが、もちろん、これも他のISOの国際規格同様にそれをそのまま実行すれば効果が出るというものではなく、プロセスを理解した上で効果を期待する対象に応じてその内容をカスタマイズしてはじめて期待する効果が得られるものです。

こうしたことも影響してか、実際、多くの企業のWeb担当者が自社のWebサイトのユーザビリティを気にしつつも、その課題が解決されないままになってしまうという状態がいまなお数多く残ってしまっているのかと思います。
Webサイトを設計する側も、一般的なWebユーザビリティに関してはある程度のノウハウを持っていても、先に示したプロセスの必要性を正しく理解していなかったために、個々の企業=ユーザーの効果・効率・満足度を向上するようなWebサイトを構築することができなかったのだと思います。

しかし、それはWebサイト構築の手法という狭い範囲で解決策を見出そうとするからであり、ユーザー理解という点では、はるかに長い歴史をもったマーケティングに関する既存の法則コンセプトを適切に利用としなかったからでもあるでしょう。
多くの企業がWebサイトの目的の1つに必ずといっていいほど、「マーケティングのための活用」を挙げる現在において、Web構築やWebユーザビリティ設計に関わる人間が、基本的なマーケティングの法則やコンセプトを理解していないということは、もはや努力が足りないと断言してよいでしょう。

例えば、AIDMAの法則では、ユーザーの消費行動の過程には、認知~興味喚起~欲求喚起~制約解除~購買アクションの促進という段階があると言われています。
しかし、Webサイトにおいて、ユーザーが段階に応じて必要とするこうした情報がすべて「製品情報」カテゴリーに入っているかというとそうではなく、別カテゴリーの「ユーザー事例」「よくあるご質問」「スタッフによるコラム」などにもユーザーの理解を促進するコンテンツは用意されていたりします。
そのため、商品を知った(認知した)ユーザーがもっと詳しく知る(興味を高める、欲しいと思う)ために、情報を得ようとしても、そこに適切な形でのユーザー導線が設けられていなければ、Webサイトの別のカテゴリーにそうした情報が掲載されていてもユーザーは気づかないことが多いでしょう。
また、そうした情報にユーザーが接することがなければせっかく商品を知ってもらっても最終的な購買アクションにはつながりません。
もちろん、商品を認知した段階でのユーザーに対して、最終的な購買アクションを促進する「サービス利用のお申込はこちら」「製品に対するお問合せ」というボタンを配置したユーザー導線を設けても無駄です。

ユーザーの製品理解、企業理解を促すことを目指すなら、ユーザーがそれぞれのページを閲覧したあとに、さらに理解を深めてもらうためにはユーザーがどんな情報を必要とするかを抽出し、抽出された各情報コンテンツへの導線をつくることが必要です。
つまり、AIDMAの法則に対応したユーザーの理解度の段階に応じて、関連する情報へのリンク(=ユーザー導線)を適切に設置してあげるのです。

このようにAIDMAの法則を活用してユーザー理解を行えば、当該サイトの企業側の目的とユーザーの目的に適応した形でのユーザビリティの向上につながりますし、また、それによる企業理解、商品理解により、マーケティング課題としての、Web経由での問い合わせ件数の向上や既存顧客へのクロスセル/アップセルにもつながるはずです。

また、同じように、イノベーター理論を参照すれば市場成熟度や自社の市場浸透度などに応じてターゲットユーザーが必要とする情報というものが特定できますし、ランチェスターの法則を参照して、市場においては3番手以下の企業がインターネット上では「強者」となるためにユーザーの潜在的ニーズに応じた大量のキーワードによるSEO対策(=サーチエンジン・ブランディング)を実行する戦略もとることが可能でしょう。

この他にもWebユーザビリティの実現のために、マーケティングから学べることはいくらでもあります。
なにしろここ何十年もマーケティングは、顧客(ユーザー)理解のために研究と実践を繰り返してきたのですから。
これまで別物のように扱われてきたWebユーザビリティの問題とマーケティングの問題ですが、これからは双方の知識・理解をもった人間が全体を統合する形でWebサイトの構築/運用に携わることができるかどうかが、Webマーケティングの1つの成否のポイントになるのは間違いないでしょう

さて、次回は、ユーザビリティ設計のための「必要なコンテンツの抽出」~「情報設計」にも役立つ、マインドマップを利用した思考法、情報整理法と、その応用としてのWebサイトにおける情報の組織化、構造化の手法について、マインドマップ ~階層構造で考える~と題して紹介したいと思います。お楽しみに。

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