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このコーナーでは、企業でWebサイトの運営に携わっている方、マーケティング部門等でWebの活用法について考えておられる方向けに、Webマーケティングの実践のための手法やノウハウ、事例をご紹介していきます。市場に出回る書籍や雑誌では論じられることない、Webマーケティングの最前線に触れていただければと思います。

2006年12月13日

価値提供プロセス重視のブランド戦略

マーケティングユニット 棚橋

今回はあらためてWebブランディングについて考えてみます。

まずWebブランディングとは、Webサイトのブランディングではなく、Webサイトを活用した企業そのもの、あるいは製品そのもののブランディングであると定義します。
ようするに、Webブランディングとは、Webサイトを使ってブランディングを行なうことにより「売上が上がった」だとか「採用希望者が増えた」などの、ブランディングを行なう目的として視野に入れた実利的なビジネスの効果を上げることを目指すことであって、決してWebサイトの評価を高めることではありません。

■Webだけではブランディングはできない

また、Webブランディングという言葉を聞くと何やらWebだけでブランド構築できるような印象を受けますが、そんなことは金輪際ないと考えてよいでしょう。もともと企業、製品の側にブランドとして評価されるような資質があってこそ、Webでのブランディングが可能になるのです。

この場合、Webサイトは企業や製品がもつ隠れた資質を引き立たせ、その価値を増幅する役割を負うのであって、ブランドを0から作り出す役割を負うわけではありません。
企業や製品の側にどのような価値を社会に提供していくのかというミッションの定義があって、それを顧客(あるいはそれ以外のステークホルダ)が評価してはじめてブランドは生まれます。その際、Webは企業と顧客の接点を強化し、顧客がより企業の提供する価値に触れる機会を増大させるのあって、そこでどんな価値が提供されるかを決めるのはWebではなく、あくまで企業の強い想いなのです。

■価値提供がなければ口コミ=評価も生まれない

ブランドとは企業や製品に対する顧客の評価です。しかも、愛着や信頼、憧れのような、顧客の中である程度の持続性をもつような種類の評価です。
ブランドに対する評価は顧客のブランド経験から生まれます。ブランド経験には製品やサービスに対する直接的な経験だけでなく、知り合いの話やネット上での口コミなどを介して触れる間接的な経験も含まれます。

最近ではネット上の口コミがWebマーケティングの分野などで注目を集めていますが、リアルな場であろうとネット上であろうと、口コミは元になる経験がなければ発生しないということを忘れてはいけないでしょう。ブランドの側が価値を提供する(あるいはその期待を裏切る)からこそ、口コミが発生するのであって、顧客の側から自然と口コミが発生するわけではありません。

Webでのブランディングが可能なのは、まさにブランドがWebを使って価値を提供したり、リアルな場での価値提供に関する告知情報などを提供することで、顧客にブランドを経験する場を与え、口コミのきっかけを作ることができるからです。
ところで、そもそもブランドが価値を提供できるのは何故なのでしょうか?

■価値提供プロセスを重視する

企業が顧客に対して価値提供を行なうことが可能なのは、そのために設計された価値提供プロセスがあるからに他なりません。顧客に製品を販売するためには、製品開発のプロセス、製品製造のプロセス、製品流通のプロセスなど、さまざまなプロセスが必要です。ブランド価値につながる顧客の評価はこれらの価値提供プロセスが作り出しているのだと考えることで、非常につかみづらいブランドというものも理解しやすくなるのではないでしょうか?

ブランドというものを価値提供プロセスの側面から理解すると、顧客視点からみたプロセスを重視するシックスシグマのフレームワークが利用可能になります。シックスシグマは顧客の視点からみたビジネスプロセスを事実ベースで改善/再設計/管理する手法です。VOC(Voice of Customer、顧客の声)システムは、ブランドの評価をビジネスプロセスの視点から分析することを可能にするでしょう。ブランドというどちらかといえば曖昧な印象のあるものがシックスシグマのフレームワークに沿って考えると、きわめて科学的な手法での分析対象として捉えることが可能になります。

■SIPOCダイアグラムによる価値提供プロセスの可視化

『シックスシグマ・ウエイ―全社的経営革新の全ノウハウ』ではシックスシグマ活動のロードマップとして以下の5つのステップが示されています。

  1. コア・プロセスと主要顧客の確定
  2. 顧客要求の定義
  3. 現行パフォーマンスの測定
  4. 改善活動の優先順位づけ、分析、実行
  5. シックスシグマ・システムの拡張と統合

最初の「コア・プロセスと主要顧客の確定」では自社がどのようなビジネス・プロセスで誰に対して価値提供を行なっているのかを定義します。これはまさしく自社のミッションをより具体的な形で描くことに他なりません。
コア・プロセスを明確にする際にはSIPOCダイアグラムがツールとして用いられます。

S:サプライヤー(Supplier)
重要な情報、原料その他の資源をプロセスに供給する個人あるいはグループ。
I:インプット(Input)
プロセスに供給される資源。
P:プロセス(Process)
インプットを加工することで価値を付加する一連のステップ。
O:アウトプット(Output)
プロセスの最終成果物。
C:顧客(Customer)
アウトプットを受け取る個人あるいはグループあるいは別のプロセス。

SIPOCダイアグラムを用いて可視化することで、自社の主要顧客が誰なのか(Customer)、顧客に対して具体的に何を提供するのか(Output)、それを提供するためのプロセスはどのようになっているのか(Process)、プロセスを開始するためには最初にどんなインプットが必要で(Input)、それは誰から手に入れるのか(Supplier)が明確になります。

■Webブランディングをビジネス視点で管理可能なものにする

コア・プロセスがSIPOCダイアグラムで可視化できれば、VOCシステムから得られるデータを元に、顧客要求をアウトプットに対するアウトプット要求と、価値提供プロセスにおけるサービスに対する要求(サービス要求)に分けて、把握することが可能になります。そこから現行のプロセスが顧客の要求に対してどのくらいのパフォーマンスを発揮しているか、顧客要求を満たせていない欠陥率がどのくらいあるのかを測定します。測定に際してはSIPOCダイアグラムをさらに詳細なタスクレベルに落とし込んだ詳細プロセスマップなどを描くことで、どこで顧客要求を満たす上でのボトルネックがあるかを把握しやすくなります。

現代経済では製造業よりもサービス業に従事する人のほうが多いが、そのサービスの大半は質が低く、欠陥が多い。もし同じ頻度で欠陥品を生み出す工場があったら、ひと月で閉鎖に追い込まれるはずだ。シックスシグマの提供する強力なツールは、このようなサービスの正確性と質を、これまで精密機器メーカーだけが維持してきたレベルにまで引き上げるものである。

『シックスシグマ・ウエイ実践マニュアル―業務改善プロジェクト成功の全ノウハウ』

顧客要求に対する欠陥率のレベルを「精密機器メーカーだけが維持してきたレベルにまで引き上げる」ことを目的として、企業の価値提供プロセスを改善/再設計/管理する。
こうしたシックスシグマ活動そのものをブランディングとして捉え、かつ、プロセス改善/再設計/管理のための経営革新ツールとしてWebの活用を考えるよう、Webブランディングというものを捉えなおすと、これまでいまひとつビジネスにもたらす効果のほどが曖昧だったWebブランディングも、きちんとその効果を把握でき、管理可能なものになるのではないでしょうか。何よりシックスシグマのフレームワークやさまざまなツールを活用することにより、Webブランディングは単なるWebの効果測定/管理から、ビジネスそのものの測定/管理、ビジネスプロセスの測定/管理に変換することが可能になります。

ブランドはイメージではなくビジネスです。
ビジネスには、シックスシグマのようなビジネス向きのツールを用いたほうがより適切なマネジメントが可能になるのではないでしょうか。


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