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このコーナーでは、企業でWebサイトの運営に携わっている方、マーケティング部門等でWebの活用法について考えておられる方向けに、Webマーケティングの実践のための手法やノウハウ、事例をご紹介していきます。市場に出回る書籍や雑誌では論じられることない、Webマーケティングの最前線に触れていただければと思います。

2006年02月20日

Blog、RSSの普及でWebサイトのアクセス数はどう変わる?

マーケティングユニット 棚橋

今回は予定を変更して、情報の共有側が優位なWeb1.0の時代から、情報の需要側が有利になるWeb2.0時代の企業Webサイトのアクセス数にどんな変化が見られると予測されるか、考えてみたいと思います。

Web2.0時代のユーザーの情報閲覧行動はこれまで以上に多様化し、「Web2.0の議論で欠けているもの(中編)」でご紹介したような3S(Search、Subscribe、Share)に大別される情報検索、閲覧行動が主流となるような方向に変化してきています。
その際、誤解してはいけないのは、ユーザーの閲覧行動のスタイルが変化しても、インターネット利用時間の総計はそう大きくは変わらないということです。

総計が変わらず、足し算する要素が増えれば、当然、各要素に配分される割り当て量は減ることになります。要素間の競争は激化し、これもまた当たり前のようにユーザーにとって便利な要素が他より多く時間を割り当ててもらえることになります。各要素間に利便性を軸とした自然淘汰が起こるわけです。
ここで要素といっているのは、例えば、情報検索を含むWebサイトの閲覧であり、メールのチェック/返信であり、RSSリーダーでのRSS/Atom Feedのチェックであり、Blogの閲覧や記事の更新などです。このうち、後の2つの要素はかつては存在しなかった要素です。ユーザーの利用時間の総計にはある程度の上限があるはずで、要素が増えた分だけ、前からあった要素(メール、Web)に費やしていた時間を新たに加わった要素(Feed、Blog)に割り当てることになるでしょう。

一方でサイト側のアクセス数もそれに応じて変化します。
アクセス手段の要素は増えますが、こちらはユーザーの利用時間と異なり、上限はありません。各要素の総計がサイト全体のアクセス数となるわけです。

しかし、ここには落とし穴があります。
各要素はあくまでユーザーの利用時間に縛られているからです。

さて、ここからは架空の企業サイトを例とした算数の問題です。

例えば、ある企業は、Webサイト全体のアクセスの8割をSEOもしくはリスティング広告からの訪問で稼いでいたとします。計算を簡単にするために月間80,000ユーザーを獲得できていたとしましょう。つまり、サイト全体では月間100,000ユーザー獲得できていることになります。

さて、ここでユーザーのインターネット利用時間に変化が起き、これまで検索~サイト閲覧に割り当てられていた時間が、Blogを書いたり、RSSリーダーをチェックしたりする時間に割かれることになったと過程しましょう。そのことでWebの閲覧に割り当てられる時間がはそれまでに比べ4分の1減少してしまったとしましょう。
そうなると他の条件が変わらないという条件下では、先に設定したWebサイトのアクセス数(月間80,000ユーザー獲得)のうち、検索エンジン経由のアクセス数は同じように4分の1(月間20,000ユーザー)減る可能性があります。その分、RSSリーダー経由のユーザーなどが増やせれば、いいのですが、そうでなければアクセス数は全体でも減少するでしょう。

これを図にすると、こうなります。

access

前回まで紹介してきたようなインターネット環境のWeb2.0化は、このような数字の影響を企業サイトに与える可能性があるのです。上記の例では、変化の影響が良いほうに働いた場合とそうでない場合で月間40,000ユーザーの差が生じることになります。
もし、この架空のWebサイトが企業のマーケティングで大きな役割を果たしており、Web経由の問い合わせや販売が会社の売上に大きな影響力を持っていたら大変なことになっていたはずです。

さて、ここまでは単純な算数でした。
実際には、これほどはっきりした形での変化を見るには、ある程度の期間をおいて比較しなければならず、その際には他の条件が異なることで、今のような単純な比較は望めないはずです。

しかし、ここで行った算数を使った思考実験が現実をまったく表していないのとはいえません。むしろ、こうした変化はある企業にはすでに起こっており、その他の企業でもこれから起こりえることだと思います。
それが起こったか起こっていないかの差は、企業がターゲットにしているユーザー層の違いであり、若年層でインターネットに対するリテラシーの高いユーザーを相手にしている企業でなら、こうした変化はすでに経験済みでしょうし、そうでない企業であれば、インターネットリテラシーが高い順にこうした変化を今後経験することになるでしょう。
また、こうした変化をいつ経験してしまうかは競合企業の動向にも当然、左右されることになるでしょう。

この変化は不可逆的なものです。新しく登場したRSS/Atom Feedや共有サービスが市場に浸透する一方であるのに対し、メールマガジンなどによる集客は逆に減ることはあっても増えることはないと考えられるからです。
そして、何より大事なことはこうした選択がすべてユーザーの利便性や必要を満たす度合いで評価されるということです。

■RSS/Atom Feedの優位性

RSS/Atom Feedが有利なのは一度登録すれば、検索のようにその都度、能動的なコストを払う必要がないことと、メールマガジンのような登録のわずらわしさや解約しても送られてくるような不安を感じずに済む点で、これはユーザーの利便性が非常に高いと考えられます。
かつてオプトインメールと呼ばれていた仕組みが夢見ていたことをRSS/Atom Feedは異なる方法で実現しています。それは情報受信の取捨選択権を完全にユーザーに明け渡したデマンドベースの情報発信を実現したことによるものです。どちらがユーザーにとって利便性が高く、結果として多くのユーザーの獲得につながるかは考えてみればわかるはずです。
Web2.0の議論で欠けているもの(中編)」のエントリーで、RSS/Atom Feedを「Pull型のツールであるととらえたほうがユーザー満足度の向上につながりやすい」と書きましたが、それは上記のような理由によるものです。そうでなくとも、RSS/Atom FeedはそもそもがメールにおけるSMTPにあたるものがなく、RSSリーダーのクローラがサイトに更新情報があるかないかをチェックしに来ているという時点でPull型です。また、メール配信なら送り先のアドレスを送り主側は知っていますが、Pull型のRSS/Atom Feedの場合では逆に知っているのは受け手側(のRSSリーダー)だけで、情報の発信側は誰がRSS/Atom Feedを取得してくれているのかを知る術もありません。RSS/Atom Feedによるコミュニケーションの主導権は完全にユーザー側にあるのです。つまり、これがデマンドベースの情報発信なのです。

■Blogの優位性

BlogとRSS/Atom Feedの組み合わせは、情報発信者の個性を感じさせるものにできればより有利になります。オプトインメールがカテゴリーやテーマで情報受信をするかしないかの選択をユーザーに迫っていたのに対し、RSS/Atom Feedの取得はテーマやカテゴリーよりも書き手の個性によって選択されることが多いと思われます。これはトップダウンのカテゴリーで分けられたディレクトリ検索で情報を探すのと、ソーシャルブックマークなどでお気に入りのユーザーのリストから情報を探すのとの違いと同類のものでしょう。

さて、パーソナルであることを考えると、年に数回しか連絡をくれる人より、頻繁に連絡をくれる人のほうが親近感をもてるというのは、当然、考えられる結果です(もちろん、その人のことを気に入っていることが前提ですが)。その点を考慮すれば、Blogでのコミュニケーションは最低でも週1、2回更新する必要があるのではないかと思います。それくらいの更新頻度を保てばユーザーの印象に残りやすいでしょうし、その情報が有益に感じてもらえるならユーザーは更新を待ちわびてくれるようにもなるはずです。

■ソーシャルブックマークの影響度

Blogとの相性を考えると、del.icio.usはてなブックマークをはじめとするソーシャルブックマークの存在は見逃せないでしょう。多くのBlogの更新頻度の高さは、ソーシャルブックマークを利用しているユーザーにブックマークすることを促します。つまり、次々といろんなBlogが更新される中で、ユーザーは気に入ったエントリーに印をつけることで記憶しておこうとするのです。

多くのユーザーにブックマークされたBlogエントリーは、他のユーザーの目にも留まるようになり、そこから新規のユーザーが訪れるきっかけになることもあります。それは検索エンジンで上位表示されるのと同様の効果があります。

例えば、はてなブックマークの注目のエントリーを見てみましょう。ここでは常にどんなWeb上のコンテンツがユーザーの関心を集めているを見ることができます。
同じように「Web2.0」というタグ付けされた注目のエントリーを検索すれば、「Web2.0」に関する最新の話題を見つけることも可能です。このランキングがGoogleで「Web2.0」を検索した結果と大きく違う点に注意してください。Googleでの検索結果がそれほど頻繁には変わらないのに対して、はてなブックマークの注目エントリーの検索では常に複数のユーザーによる民主的な評価による旬なランキングを得ることができます。
ここでBlogエントリーがランキングに多く含まれるのも、Blogのほうが時間の経過にともなう変化が大きく、サイト単位ではなく記事単位で記憶する必要が高いからなのでしょう。
ちなみに当Blogでは「Web2.0の議論で欠けているもの(前編)」「CGM時代の情報の複製と創造性(後編)」をはじめ、こんなエントリーがはてなブックマークのユーザーの人気が高かったようです。

こうしてはてなブックマークの注目エントリーのランキングに表示されたWebページには、結果として検索エンジンに上位表示される以上の多くのアクセスが得られることになります。
Googleなどの検索エンジンと異なるのは、その期間が長く持続しない点でしょう。それでも、普段見てくれていなかった新規ユーザーがBlogを訪れてくれるだけでなく、もし、その人が気に入ってくれればRSS/Atom Feedを登録してくれる可能性もあります。自社が発信している情報をより多くのユーザーに伝えるチャンスとしては十分です。

■検索エンジン最適化からユーザー利用コンテクストへの最適化へ

ここまで見てきたように、最近まで当然のように信じられていた、リスティング広告を含む検索エンジン最適化(SEO)が絶対的な優位性をもっていた時代は終わりつつあります。それはGoogleやYahoo!などでは見つかりにくい多くの情報が、Web2.0的なメディアであるソーシャルブックマークやBlog検索、ソーシャルネットワークなどを通じて得られることがわかってきたからです。もちろん、Googleなどの検索が不必要になったわけではなく、用途によって使い分けられるようになりはじめたと理解したほうがよいのでしょう。
Googleなどの検索エンジンの機械的なアルゴリズムによるランキングとは異なり、これらのWeb2.0的メディアでは実際にWebコンテンツを見て読んだユーザーたちの評価による民主的なアルゴリムによってランキングされます。当然ながら機械相手の最適化はそこでは通用しません。よりユーザー自身の情報利用のニーズにマッチするよう情報を最適化する必要が高くなるのは言うまでもありません。
そして、こうしたユーザーニーズに対するマッチングの精度を高める努力をしなければ、最初の「算数の問題」で見たようにいつの間にかサイト自体のアクセス数が失われてしまったということにもなりかねません。戦略とは環境適応のことを指します。環境が変われば柔軟にWeb戦略を変更する必要があるでしょう。

次回は、もうすこし詳しくWeb2.0とSEOの関係を見ていくことにしましょう。

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