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このコーナーでは、企業でWebサイトの運営に携わっている方、マーケティング部門等でWebの活用法について考えておられる方向けに、Webマーケティングの実践のための手法やノウハウ、事例をご紹介していきます。市場に出回る書籍や雑誌では論じられることない、Webマーケティングの最前線に触れていただければと思います。

2005年04月28日

Webユーザビリティに対する大きな誤解

マーケティングユニット 棚橋

マーケティングにおいて、ターゲティングという言葉はよく聞かれると思います。ターゲティングというと少々むずかしい気もしますが、ようは「誰に売るのか」「誰に使ってもらうのか」ということです。物を売るという活動において、誰に売るかもわからずに売ろうと考えるのは、実は、歴史的に見ればきわめて異常なことです。
大量生産の時代、マス・マーケティングの時代でこそ、誰に売るかをそれほど考えなくても、作れば物は売れましたが、実は、そんな売り方をしていたのは、せいぜい、この100年くらいのことだということが歴史を振り返ればわかります。そんな特異な時代ももはや終わりかけています(いや、すでに終わっているでしょうか?)。ワン・トゥ・ワン・マーケティングは一時の流行のようにあまりその言葉自体は聞かれなくなりましたが、マーケティングのポイントがその言葉が話題になっていた時以上に、顧客との関係性(リレーションシップ)の構築・維持へ重点が移動してきています。
売る相手(ターゲット)が誰かがわからなければ、もはや、期待する売上を上げるのはむずかしい時代になりました。私たち、Webマーケティングに関わる人間にとっても、誰に対してマーケティング・コミュニケーションを行なうかを考えずに、成果をあげることはむずかしくなっているように思います。

そこで私たち自身、1つ見直さなくてはいけないのがWebユーザビリティについての考え方です。

現在、Webユーザビリティに関しては、私たち、Web業界に従事する者の中でも大きな誤解が持たれているように感じます。その誤解とは、一言でいえば人間中心設計とユーザビリティの混同です。

よくよく考えてみればわかることなのですが、ユーザーと人間とは同義ではありません。
ユーザーと呼んでいる以上、その人間は常にすでに対象となるアプリケーション(使う人の用事を済ますことができる用途をもった道具)を前にしていることになります。そのため、ユーザーとはそもそもの定義において単なる一人の人間ではありません。ユーザーとはすでにその定義において何かと対峙した一人の人間であり、むしろ、一人の人間とその対峙した何かとの関係性を示した用語と捉えられます。
そう考えれば、ユーザビリティとはその関係性自体を論じることが必要であるという意味で、単に"人間中心"設計なのではなく"ユーザー中心"設計に関する問題であることがわかります。

しかしながら、現在のWeb業界においては、残念ながら、このユーザビリティと人間中心設計が混同されてしまっている傾向が少なからずあります。むしろ、Webに関するプロほど誤解しているのではないでしょうか。
よく起こりがちなのは、対象となるサイトのオーナーである企業に関する事業理解、商品理解、業界理解もおざなりにしたまま、ユーザビリティに関する設計を行なってしまうことです。そこではユーザーの視点=素人の視点というロジックが働いているわけですが、先にも書いたように、ユーザーは自身の用事において積極的に対象物に関わろうとしているという意味で単なる素人とは異なります。しかし、多くのユーザビリティに関する議論がこの点において、ユーザーと素人(あるいは一般的な意味での人間)を明確に区別できていない傾向があるのです。

一般に認識されているWebユーザビリティの最大の間違いがそこにあります。
一個人がユーザーになった瞬間、そこでは一人の人間と対象物の関係全体を問わなくてはなりません。
Webユーザビリティの対象が企業サイトであるならユーザビリティを検証、設計する専門家は、顧客(あるいは見込み客)と対象企業(あるいはより具体的なレベルで商品や商品の売り)との関係性においてユーザビリティを問わなくてはいけないはずです。ようするに、それはもはやマーケティングの視点そのものです。マーケティングが顧客と企業の双方のマッチングを考えるように、企業サイトやECサイトのユーザビリティを検証、設計するためには、顧客(=ユーザー≠一般的な人間)を知り、かつ、企業そのものを知ることが大前提となるはずです。
Webユーザビリティに関わる専門家はユーザビリティの検証、設計にあたって、ユーザーの利用対象となる企業の事業理解、製品理解、競合他社の動向などの市場環境をある程度把握できていなくてはなりません。ただ、少なくとも、企業の側を理解することはまだ簡単なことです。それは実際のユーザーである顧客自身を理解することに比べればはるかに簡単なことです(顧客を理解することは、多くのマーケターがさんざん苦労しても可能かどうかわからないくらいむずかしいものですから)。

こう考えると、前提となる企業理解を怠り、素人の目とユーザーの視点を混同したまま、ユーザビリティを云々するのはプロとしての怠慢といわざるを得ません。もちろん、こういうことがいえるようになったのは、ようやくWebサイトの設計も人間中心設計という意味では成熟期を向かえ、一段上のWebマーケティングの領域に足を踏みれいるようになったからでしょう。
それは誰に売るかを考えなくても物が売れたマス・マーケティングの時代から、顧客一人ひとりとの関係性を重視するリレーションシップ・マーケティングの時代に移り変わったのと似ています。それ自体がリレーションシップ・マーケティングの重要なツールであるWebサイトのユーザビリティが、マーケティングの基本である「顧客を知り、自社を知る」ことと強い関係性を持って論じなければならなくなったのは、必然ともいえるでしょう。

私自身、つい最近までユーザビリティと人間中心設計を混同してしまっていた感があるくらい、この問題はWeb業界では根深いものです。しかし、今後、Webというツールの持つ役割が企業の経営において、また、社会における役割において重要度を増していく中で、この大きな間違いである混同は早急に改めていかなければなりません。これが私たちWeb業界に身をおく一人ひとりの課題であり、業界全体の課題であることは間違いありません。

というわけで、次回はさらにこの話題を推し進めて、ワン・トゥ・ワン・マーケティング ~顧客を知る~というテーマで書いてみたいと思います。

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コメント

単なる思い込みではなかろうか?
このような文章を平気でWebで公開する執筆者の常識を疑う。プロである前に、常識人であってほしいものだ。

Posted by: koji : 2006年05月29日 05:16

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